「どう?笑える」
「やべーよ高尾君。顎が死んだ」
「女の子がやべーよとかいわないの」


スマプロから一週間。門田ちゃんは歪みなく笑わない。笑えないままだった。
まぁ最近は少しだけ表情の変化は見えてきた。見えてきたといっても眉の上がり下がりとか目とかだけだけど。


「高尾君の笑顔はいいなぁ」
「え、なにが、」

「高尾君の笑顔は国宝級だよ。誰も不快にさせない様な綺麗で温かい笑顔なんだよ。高尾君は喜怒哀楽の中で喜楽が一番素敵だと思うんだ。素敵、っていえるまで笑顔が素敵な人そうそういないと思うんだよね。それってすっごく大切な事だと思う」


無表情だけどよく喋る門田ちゃんがスラスラと言葉を繋げていく。意外にも早口な台詞に聞き取るのがやっとだった。
やっとだったから、気づかなかった。


「(……あれ、今俺めちゃめちゃ恥ずかしく褒められてない!?)」


気づいたとたん急に恥ずかしくなって門田ちゃんを直視できなくなった。心臓がバクバクと煩い。あれ、もしかして俺って意外と純情!?ヘタレ!?まじかよ!!


「…なんか、狡いわ」
「え、なんで」


ようやく心臓のリズムが戻る。じとりと門田ちゃんを見つめると、無表情ではない微妙な顔で頭にハテナを浮かべている。
もうやだ、この子、実は全部計算でしたとか無しだかんね。


「高尾君なんか可愛いね」
「うわ、それいっちゃう?もー門田ちゃんったらぁ、ぼっちとか嘘じゃないの?」
「私昔はきらめくリア充だったからね」


門田ちゃんの無表情をみて、きっと何かあったんだと思ったけど結局何もいえなかった。


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