九月になってもじわじわと暑さは止む事は勿論無い。久しぶりに再会したクラスメイトは皆黒くなっていた。どんだけプールと海にかよったんだ…
席について鞄から文庫本を取り出す、まだ読み終わってないミステリーに胸をどきどきさせながら読み進める。これははらはらするいい作品だ。


「おいっすーおはよー」


違う意味で心拍数がはね上がった。


「うおー!!ちょっとしか高尾焼けてねぇじゃん!!」
「室内スポーツだしなー」
「じゃあお前、夏休み部活しかしてねぇの!?うわー高校初夏休みなのに…」


おおおそうなんだ、あんまり焼けてないんだ、おおお本から目を放してないけど本も読めない、おおお……おおお、
いやだめだこれ思ったより隠せないどうみても好きがだだ漏れ状態だ。底のないコップ状態である。だめだ、例えがくだらない!!

ひたすら悶々と考えていたら、隣の席に気配を感じる、いる、いや大分前から教室にいるけどね!!どすんと鞄の重みで机が軋む音がする。あ、いけそう、今からおはよういける!意を決して顔をあげたら、


「おはよう雫ちゃん」
「……おは、よう、ございます」
「ふはっ!なんで敬語!?」


そりゃあ机の前にこられたら敬語にもなりますって高尾さん。もう心臓に悪いとかじゃない、高尾君私を殺しにきている…!!最悪だ…!!これだから高尾君はかっこよくてモテちゃうんだよ…!!

前の席(鶴ちゃんの席)に座り私の方を向く、そのままニコニコと私を眺めた。


「………あの高尾さん」
「和成でいーよ!!何?」
「高尾さん、どうして前に…」
「あ、気にしないで本読んで!!」


読めないよ!!読めるわけないじゃん!!高尾君みたいなかっこいい子に視線をあびる事なんて私にはないんだよ!馬鹿!高尾君の馬鹿!好き!


「む、無理だよ、」
「なんで」
「なんでって、それは、」
「ねぇ、いってよ」


ファッ!?え、何いってるの高尾君どうしてしまったの!?どうしてそんな低い声だすの!?いや言えないよ何いってるの!?本当に何いってるの!?
え、言わないとだめなの?いや本当に言えないからね!?


「た、高尾君」
「ねぇ、いって、」
「「この大馬鹿野郎が!!」」
「痛ってえええええ!!」
「高尾くーん!?」


新学期ってこんなダイナミックなはじまり方する物だっけ。



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