恋愛:人間が他人に対して抱く情緒的で親密な関係を希求する感情で、また、その感情に基づいた一連の恋慕に満ちた態度や行動を伴うものである。
(※Wikipediaより引用)

そんな理論的な事を言われても理解できないし理解したくもない。単純な私の脳細胞ではそれは誰にも当てはまらないのだと思う。残念でしたWikipediaさん。


「夏祭りは浴衣でしょ」


この一言で、私の服装は白地に菊やらあしらわれた浴衣にかわり、財布もがま口に巾着という和風セットになってしまった。少し厚底気味の下駄を履き家からでる。
空は夕焼けに青が混じり紫になっていた、あと数時間で空は藍色になって色とりどりの花火が咲くのだ。

ピンク色が多い中、一人だけ濃紺に牡丹柄が目立つ、艶やかな長い黒髪はいつも通り一つに結われていた。


「鶴ちゃん」
「おー雫可愛いー」


鶴ちゃんに言われても……周りの男の子は鶴ちゃんをちらちらみるというのに…うん居心地が…


「まあ今すぐ出店でも見に行くっていいたいんだけどさ」
「…うん?いかないの?」
「行ってもいいんだけど」


にやにやと笑いながら鶴ちゃんは私を指差す、ん、私?いや、
私じゃない、


「……あ」
「おい門田、高尾をなんとかしろ、こいつ動かないのだよ」
「はっはーあたしは無視か?」


深緑の浴衣を着た緑間君はもう高校生にはみえない、もう子供を連れてきたお父さんでも違和感無しだ。いや、違和感はある。お父さんは林檎飴なんか食べない。
ゆらゆらと視線を動かし高尾君へ視線を揺らす、お、おおふ…


「た、高尾君、甚平似合ってるね」
「確かに似合ってるわー」


なんていうか直視できないぐらいに似合ってる。帯の団扇が色んな意味で高尾君感がある。いかんかっこいい、恋ではないけどね。
出会ってから一ミリを動かなかった高尾君がゆらりと動き私の肩を掴む。


「どういう事なの…雫ちゃん一体どういう事なの…」
「それがどういう事なの…」


そんなに浴衣が変だったか、なんか不味い事をしたか、何をしたんだ私。
おろおろとうろたえているとカリッといい音が聞こえる。緑間君の白い歯が林檎飴を削った。


「じゃあ後は任せた」
「あたし用事あるから」
「え?……え!?」


高尾君が私の肩をがしりと掴んだまま、緑間君も鶴ちゃんもどこかにいってしまった。…ん!?



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