「中谷先生。あの、見学です」
「ああ、高尾から聞いてる。今椅子を出すから座りなさい。端の方で悪いな」
「おおおかまいなく!」


緊張するなあ…今は外で走っているらしく、誰も体育館にはいない。鶴ちゃんは弓道部があるから本当に私一人だ、皆がきた時の誰あれ的な視線が怖い…でも高尾君と緑間君のバスケがみたい。本気で
中谷先生が出してくれたパイプ椅子に座るとギシギシ鳴る。年期が入った物といえど少し辛くなった。


「あーきっちぃー」


バンと扉が開く、その音に肩をびくりと震わせる。おおう怖い…
緑間君より少し小さいぐらいの(恐らく)先輩は私にまた気づいていないようだ。…挨拶、した方がいいのだろうか…
ぞろぞろとバスケ部の人が入ってくるが私をじろじろみる人は誰もいない。
…私、影薄いのか…?


「雫ちゃーん」


悩んでいたら聞きなれた声で新しくなった呼び方をされる。名前で呼ばれるのは少し恥ずかしいけど嬉しい。


「高尾君、緑間君」
「来たのか、ボール当たらないようにしろよ」
「あ、皆にいってるから気にしないでみてていーよ」


あ、だから皆私をじろじろみないのか。流石高尾君。言動がイケメンすぎて眩しい。ぴかぴかだ。
顔見知りにほっとしてると怒鳴り声が体育館に響く。


「おら!!緑間ー!高尾ー!集合だ轢くぞ!!」


一発でわかってしまった。宮地先輩とは彼だ。だって怖い。
というか高尾君と緑間君は大丈夫なんだろうか…な、殴られたり、してないのだろうか…
心配だと目で高尾君に伝わるかやってみたら気づいた高尾君がニカッと笑う。


「大丈夫大丈夫。いつもあんなんだけどあれ優しさだから」


うぃーすっと去っていった高尾君と緑間君は宮地先輩にチョップをくらっていたが痛そうではなかった。

キャプテンらしき人が今日のメニューをすらすらといっていく、皆真剣でかっこいい。帰宅部の私にはわからない事である。


「以上!!」


キャプテンが告げたら皆がバスケットボールを取り出す。おお、とうとう部活のはじまるのか。わくわくしてきた。
高尾君に視線を投げ掛けたら小さく手をふってくれた。

ピッー!!っとホイッスルが響く。



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