いつの間にか、私は甘えていた。
高尾君がいつでも私の傍にいてくれると、緑間君が不機嫌そうに話してくれると、鶴ちゃんがずっと友達でいてくれると、


「雫ちゃんは調子乗りすぎだよ」

「雫ちゃんは笑わなくていいんだよ」

「雫ちゃんは笑うな」

「笑うな」
「笑うな」
「笑うな」


笑うな。


心の何処かで、もう笑う事すら諦めようとしてたんだ。



「……」


最悪だ、最悪な夢をみた。
眉間に皺を寄せても気分が優れるわけではないので布団からもぞりもぞりとでる。汗がベタつくのでお風呂に入る事にしよう、気持ち悪い。


「雫ー今日はおかず置いてるから!!お弁当につめてねー」


やった、お母さんの卵焼きが食べられる。がちゃがちゃと仕事に出掛けたお母さんを見送り朝風呂に入る。あー眠い。

静まりかえった部屋は嫌なのでちゃんと見るわけじゃないがニュースをつける。女子アナの明るい声が部屋に響く。


『一位は蠍座の貴方!!思いもよらない展開にどきどき!!気になる子には優しくしてあげてね、ラッキーアイテムは黄色のノート』


私の星座は六位でなんとも微妙な位に喜べばいいのか悲しめばいいのかわからない。一人の食卓に一人分のご飯をよそう。


「いただきます」


笑う事が罪ならば、一度大声で笑ってみたいと、そうとまで思う。
高尾君みたいに、あんな風に笑いたいと今も思っている。
緑間君は、まあ、あんまり笑わないんだけど。
鶴ちゃんみたいに笑うのは色んな意味で無理かもしれない。
ああ、美亜ちゃんのように、せめて微笑む事ができたらいいかも。

まあ、それは幻想だけど。



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