震えた声で彼に思いを伝えてどれくらい時間がたったのか。


「…あの、高尾君」
「んー、なに？」
「…い、いつまで？」


なんか、流れというか、勢いというか…
思いっきり此方も高尾君を抱き締めていたわけだが、ずっとこのままは色々と、なんか、…恥ずかしい。告白した後なんだけども。


「…高尾君聞いてる？」
「んー聞いてる聞いてる」
「…高尾君」
「うんうん、マダガスカル」
「聞いてない上に意味がわからないね！そろそろ離れません！？」


流石に本気で恥ずかしくなって顔を上にあげる。するとほんのり頬が赤い高尾君と見事に視線が合い、緩んだようにへにゃりと笑われたわけで、結局抗議なんか出来なかった。


「…ず、狡い…！！」
「ごめんねー」
「ぐう…！！」


何度もいうが私は狡くはないと思う、そりゃあ、狡い事してない、とは言えないけど、高尾君の方が狡いと思う。
多分心の中でちょろいだとか思ってるんだろう。狡い！せこい！！
そんな事をぶつぶつ腕の中で愚痴っていたら上から溜め息を聞こえた。


「…はあー、緊張したー…」
「…嘘つきめ」


この後に及んで緊張したなんて、絶対嘘だろ、余裕のよっちゃんだったんだろ！！


「いや緊張したって、ほんと」
「…ふん、どうせ私なんかしりがるなんでしょう！！」
「尻軽の意味わかってないだろ」
「……ふん」
「くっそぉ、可愛い…！！」
「ちょ、いただだだだ！！」


なんなんだよもう！高尾君自分が力強いって自覚してよ！！圧死するよ！バカ！


「高尾君バカだな！」
「えー、なんか雫ちゃん冷たくない？」
「冷たくない」


もう一度抱き締めようとしてきた高尾を押し返して鞄でガードする。私はそんじょそこらのしりがるじゃないのだよ、しりがるの意味わかんないけど。


「恥ずかしいの？」
「…む、むしろなんで高尾君は恥ずかしくないの…」
「好きだし！！」
「だめだもう帰ろう今すぐ帰ろう！！」


高尾君に恥ずかしいなんて事はないのだ。何故なら高尾君は私の事が好きだから、なるほど意味がわからない、
…私だって高尾君が好きなんだけど。



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