「高尾さん!今日の放課後は部活がお休みであると聞きまして、少しだけお時間をいた、いただきたいのでございます!」
「うんいいよー」


拝啓、仕事中のお母さん。
俺は今似非リア充に囲まれております。


「逃げちゃ駄目だ逃げちゃ駄目だ逃げちゃ駄目だ逃げちゃ駄目だ逃げちゃ駄目だ逃げちゃ駄目だ逃げちゃ駄目だ逃げちゃ駄目だ……」


まず、隣の席の門田さんはノイローゼだか鬱だか発作だかの、シンジ君症候群にみまわれています。隣にいる俺は「あんた馬鹿ぁ?」というべきでしょうか。


「…なあ島田」
「なに」
「俺今日フラれるかもしれん、骨拾って骨粉々にして雫ちゃんの弁当に仕込んでね」
「犯罪の片棒担ぎたくねーわ!!」


頭可笑しい部活仲間は頭のバグが進行したようです。いけしゃあしゃあとしてても、バグは治ってないみたいです。いつ初代金銀のようにデータが消えるかわかりません。畜生俺のバクフーン。

嗚呼、お母さん、哀れな二人に祝福を…


「…世の中平和じゃないなー」
「そうだね島田」
「おや結城さん、死にそうな顔だけどどうかしたの?」
「…ちょっと、色々、あってね」


青白く精気の無い顔をした結城さんに、つられて目眩がした。
…お母さん、俺の周りには幸薄しかいないみたいです。勿論俺を含めて。


「…大変だねえ」
「そうね、とりあえずここらへんでやけ食いできる店はないかしら」
「結城さんやめよう」
「そうね、今日も世界は平和ね」
「落ち着いてよ結城さん俺流石に全員のツッコミ回収はできない」
「そうね、……大丈夫よ、別に」


そう言って深く溜め息を吐いた結城さんに、思わず目を見開いた。凄いなぁ、この人。本当に凄い。


「門田さんとか高尾とかに困ったら結城さんに聞けば安心だね」
「は?」
「結城より友達思いな人みた事ないよ」
「ほんと、嬉しいわあ」


けろりとした様子で笑う結城さんが切なかった。本当に凄いや、この人昨日、


「結城さんフられたんだ」
「あんたぐっさりくるね、言わないでよ泣くよ?」
「大丈夫、結城さんめちゃくちゃ良い女だから」
「あらそうありがとう」
「…色々さ、思わないの?」
「何が」
「門田さんと高尾の事」


ついさっきフられて、すぐ友達の恋事を応援なんてよくできすぎた女の子だ、流石、クラスのマドンナは違う。
それを一切他人にバレないようにするのも凄い。


「島田、どこの世界に親友が幸せになるのを喜ばない女がいるのよ」


すげえいい女だな結城さん。フった奴もったいねえ



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