「おはよう雫ちゃん、あ、私服超可愛い」
「あ、お、おは、おは…おは…いや、あ、ありが、」
「そんな緊張しないでって」


きた、きてしまった、日曜日が。


「…雫ちゃん、体調悪い?」
「へ、いや、別に」
「そっか、もししんどくなったらいってね」
「あ、あ、うん」


目の前がキラキラチカチカ光る。またくらくらきた。もしかしたらこのまま高尾君といたら死んでしまうかもしれない。


「ど、どうぞ、入って…」
「ありがと、…お邪魔します」


丁寧に靴を揃えてからリビングへ通す、自分の部屋と迷ったが高尾君がリビングで話す事にしたらしい。
あと一時間でお父さんが帰ってくる。顔をみるのは一週間ぶりか、それ以上かもしれない。

キッチンで林檎の皮を剥くお母さんが高尾君を見るといきなり目をキラキラさせた。


「あらあらまぁ、本当に来てくれたの!!」
「はい、今日はお邪魔します。これ、つまらない物ですが」
「ま、いいのにー!ほんと高尾君はできた子ねー!!」
「お母さん…!!」


お母さんの天然具合…というか、古典的お母さんな台詞には頭が痛くなる。なんていうか恥ずかしい。


「…本当に、お父さんと話に来たの?高尾君」
「…お、お母さん、」
「はい」
「……ぅ」



なんか改めて言われるともやもやする。本当にいいんだろうか、この先の私の苦労を高尾君に押し付けて。


「まだまだ餓鬼ですが、大切な人は自分の手で守りたいので」


ドスンと思いきり刺された。なんて人だ、まさか背後からいきなり突き刺してくるとは思わなかった。いきなり刺してきた所為で私の顔は血だらけだ。
ついでに、心臓も爆発しそうである。


「あらやだかっこいいわねー高尾君!!」
「まぁ一軍隊持ってからが本番ですから」
「高尾君軍隊持つのね!?凄いわねー!!」
「…高尾君、お母さんにジョーク通じないから」
「でもね、うちのお父さんってコンロ周りの汚れぐらい頑固よー」


そうだ、そうなんだ。うちのお父さんは頭が固くて、自己中心的で、根性悪で、
とにかく、お父さんは大嫌いだ。今も昔もこれからも

ドアノブががチャリと鳴った。


「帰ったぞ」



←|
top