「雫ちゃんさ、随分俺の事優しい優しいっていってくれたけど、俺そんなに優しくないよ。雫ちゃんにちょっとでも好きになってもらいたいだけだから」


もうやだこの人。


「ちょ、ちょ、ま、まって」
「たかが友人にそこまでできるわけないじゃん」
「まってって!」
「うん、なに?」


へらりと笑う高尾君に頭が痛くなる。なにいってるんだこの人は、こんな時間に、


「あのさ、高尾君、そういう冗談は」
「冗談じゃないよ、俺夏休みに入る前から雫ちゃんの事が好きだよ、大好きだよ」
「なっ、つ…」
「好きだから、雫ちゃんに頼られたいんだ、守りたいんだよ」


息が出来なくなるぐらいに心臓がどくどく脈を打つ、全身が火傷するぐらい熱い。
目眩がするぐらいに思考が回って顔どころか指先すら見れない。


「雫ちゃん、いいでしょ?好きな女の子にアピールするのは誰でもする事じゃん」
「…あ、う…」
「あはは、真っ赤で可愛い!」
「…た、高尾、高尾君は…なんで、なんで…」
「雫ちゃんってさ、思ってるより可愛いんだよ、容姿も仕草も性格と言葉も全部。ほら、俺馬鹿だからうまい事いえないんだけどさ、雫ちゃんの全部が好きなんだよ」
「え、え…」


好き、好きって、多分、そういう好きで、つまりそういう事で、高尾君はそういうわけで、


「今、今いうのかぁあああ…!!」
「えへー雫ちゃんが愛しすぎてつい口にでちゃった」
「なん…!!」


本当に、なんて人だ。


「かかかか帰る!!」
「うん、こんな時間だしね、送ってくよ」
「いい!!」
「誰でも好きな子が夜道歩くと心配で仕方ないよねー」
「う、ぐう…」


なんていうか、もう、くらっとくる。


「いいよね、雫ちゃん!」
「…や、やだ、むりむりむり…」
「ははは!!…もう俺が無理」


ああどうしようもない。



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