お父さんとあまり話した事はない。ただ顔をあわせたら酷く叱られ、怒られる。
私は意見を押し付けてくるお父さんが嫌いで嫌いで仕方なかった。


「これもう回していいから、三番テーブルにお願い」


文化祭二日目、飽きられると思っていたがほどよくお客も入り、なかなか充実しているし売上げも期待できそうだ。
メイド喫茶にはまずない野菜炒めなんかも意外性でウケているらしい。


「雫ちゃん」
「あ、高尾君、これお願い」
「明日の放課後、時間ある?」
「………えっと」


高尾君は知ってる。そして飛びきり優しい。高尾君が私の事情を知るなら、私だってわかってる。

また高尾君は私を甘やかす。


「ない」
「……」
「時間、ないんだ、明日は、だから無理」


ことりとお皿を渡す、もう出来ない、ここから先へは入ってもらえない。
大切な友人にその壁はこえさせれない、線をひかないといけない。


「じゃあ今日」
「…は、無理」
「明後日」
「無理」
「明明後日」
「無理、」
「次の日曜日までならいつでもいいから」
「無理だよ、高尾君」


優しさが心地よかった。体育祭でいった時みたいな、生温い関係が一番幸せだった。今以上は、求められないんだから。


「我が儘だね雫ちゃん」
「……え、」
「我が儘すぎるよ」


高尾君が優しく笑う。笑っているのに悲しそうで、いや、怒って、困って、…そんな複雑な表情で皿をお盆に乗せる。


「これは俺からの我が儘、次の日曜日までに話せる時間をちょうだい」


逃げてなんかない。だけど距離を詰めてもいない。ただ歩かずそこに佇むだけ。

なんか、もういいや。巻き込むよ、最低な子でごめんね。


「明日の放課後」


好きだな、



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