『変な奴がいる』

「メイドさん写真とかいいですか!?」
「できればポーズとか欲しいんですけど!」
「え、えっと…」

「ってこういう事かよ…!!」


カメラを持った集団に囲まれた雫ちゃんをみて溜め息がでた。

制服をみるに確か園高の写真部だろう。小柄な少女と太った男子部員やらが雫ちゃんに群がる。
ふざけんな人気と噂の三好さん(笑)でも撮ってろ!!あ、何?真の天使に気づいちゃった?帰れ


「すみません。うちのそういうサービスやってないんでー」
「一枚!メイド喫茶じゃ撮れないんですよ!!」
「お願いです!!一枚!一枚だけ!!」
「……た、高尾く…」
「駄目です!!」


くっそこれだからいい子は!!これだから天使は!!誰が撮らせるかバーカ!!
顔をひきつらせながら雫ちゃんをぐいぐい引っ張って別校舎に移動する。自分で着て撮れ。


「……」
「……」


ふと、南校舎に移動して冷や汗が流れる。ここまで半場無理矢理引っ張ってきてしまった。雫ちゃん女神優しいからもしかしたら「写真ぐらいで高尾君ないわー」とか思われてるかも知れない。あれ、なんかやばい?


「…雫ちゃん…?」
「………」


あ、やばい、これもしかしたら怒ってる?怒ってるの?もしかして写真撮られたかった?そこは安心して俺が撮ってやる!!!!


「…雫ちゃん」
「ありがとう高尾君」
「ファッ!?」


まさか、まさかの礼…だと…?よかった、セーフだった…いや、まて和成。もしかしたら「ありがとう(嫌味)」なのかもしれない…気を落ち着かせろ和成、否、気を抜くな和成!!!!


「…園路中学、私の出身校だから、知り合いがきてちょっと嫌だった、相手は気づいてないみたいだけど…」


語尾がどんどん小さくなる。なんか文化祭始まってから雫ちゃんの一喜一憂が半端じゃない。可愛いけど、可愛いけど別の意味で、ぎゅううう、と胸が締め付けられて苦しい。ああでも雫ちゃんももっと苦しくて、

それでも笑ってくれる。


「雫ちゃん」
「…なに?」
「目を閉じて」


簡単な俺なりの下らないジョークみたいな物だ。この際笑っていただけるならなんでもする。


「今、雫ちゃんは道の真ん中にいます」
「……」
「そこに、三好の服装の池田先生が全速力で走り去っていきました」
「ぶふうっ!!!!」


大成功。雫ちゃんはひいひいと笑いはじめた。ちなみに池田先生というのはハゲが素敵なメタボなおっさんだ。


「何回もいうけど雫ちゃんは笑った方が可愛いからね」
「ひ、ふっ……それは、やっぱ、…照れる」


俺の持っていた看板を取り俺に顔が見えないようにする。可愛いなあ、ほんと。



←|
top