地獄のような勤務時間をこえたら次に待ってるのは至福の休み時間だ。


「時間までに帰らなかったらエース様は死ぬと思えよ」
「必ず帰ってこいよ高尾」
「俺はメロスか」


再び仕事に戻った真ちゃんを見届けてやっとの休み時間に体を伸ばす。ばきばき鳴るし、ずっと歩いてたら足も疲れた。


「高尾、彼女待ってるよー」
「おー草津…残念だけど彼女じゃねーわ」
「は?まじで?付き合ってないのぶふうっ!!」
「笑うなよぼっち」
「ぼっちやめろ馬鹿」


げしげしと足を蹴る草津の脇腹を軽くどついて愛しの彼女(にならせたい)の元へ向かう。制服着ていちゃいちゃしたいが売り上げ一位を狙う俺達の服装はメイド服と執事服、このまま回るのだ。


「時間ないしさっさといこう雫ちゃん!!」
「うん」
「どこいきたい?」
「美亜ちゃんとこ」
「ですよねー」


正直嫌な予感しかしないがこんな可愛い雫の言うこと聞かないなんてただの阿呆だ。宣伝用の看板を持って教室からでた。


「…思ってたより混んでるね…」
「明日はすくだろうけどなー、今日がかき入れ時だし」
「初日にくる人多いからねー…ここだ」


確かこの校舎の一階が三好のクラスだったような気がする。北本さんがあそこで売り上げを伸ばすのはキツいとかなんとかいってた。

人混みをわけるように進み、キツい、とかいってたわりに人がいるクレープ屋につく、皆好きだなクレープ。

レースやらで可愛らしく飾られた外装はなかなかクオリティが高い。制服でやる分の経費が浮いたのだろう。
クレープの甘い匂いが漂う教室もぬいぐるみやらで随分とメルヘンになっていた。


「いらっしゃい雫……と…えっと…ゴキブリ?」
「殴り飛ばすぞクソアマ…ていうかなんでお前だけそんな格好なの」


都合よく記憶喪失になった三好は一人だけウェイトレスみたいな格好をしていた。
水色とピンクのストライプが入ったブラウスとパニエ、クリーム色のエプロン。頭には巨大なリボンとうさみみが乗っかっているし、編み込みのブーツまで履いている。一人だけ気合いの入れ方が凄い。


「あたしだけこれ着てつったてろって、まあ料理できないしいいんだけどね」
「美亜ちゃん可愛い…!!」


目を輝かせるメイドという名の天使にまたずきゅんとくる。


「雫ちゃんの方がかわ」
「ふあああああ雫の方が可愛い流石あたしのマイエンジェルふぁおおお!!抱いて!抱かせて!」
「ふざけんな雫ちゃんに触んな!!」
「うぜえな高尾、前髪の触角千切ってからこいよ」
「触角じゃねぇよつーか十五になってうさみみ?あいたたたた痛いわー」
「…クレープ…」



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