ご。



「なっきー!俺…俺ずっとなっきーのこと好きだったんだ…!俺と付き合って下さい!」
「もっと俺がときめくような告白して!!」
「待ってさくちゃんから学プリ借りてくる」

待って。
何で目の前で由之助と夏貴の告白劇場始まってんの。ていうか告白以前の問題言われてるし。
夏貴それはOKなの?だめなの?それともそれ以前の問題なの?
まあわかってることはこれが由之助からの八つ当たりっていうことぐらいだろうな。
あいつ惚けた顔しつつもちゃんと夏貴のことフォローしてるってことは、夏貴に本気だったのかもな。
親友の恋愛事情もあまり把握してないからわからないけど、由之助自身顔はいいから告白だって結構されてるわけだ。なのに付き合ったことある女子なんて数少ないらしいし。
そう考えると由之助からしたら俺は敵で、意中の奴から告白されてんのに保留にしているクソな奴としか思えんよな。まあじゃあ中途半端な気持ちで付き合いだしたら確実に殺されるのは目に見えてわかってるけど。というか玄兎が許すわけねえけど。
ちゃぶ台に凭れ掛かりながら告白劇見てれば、隣に桃浪が座ってきた。
ニヤニヤしながらこっち見てる顔に腹立つ。何お前。

「先輩ヤキモチ妬いちゃった?」
「は?」
「今めちゃくちゃしかめっ面してるけど、気づいてない?」
「いやただ単に由之助気持ち悪いなと」
「それはクソ程わかる」

あれまたなっきからヤングドーナツの件蒸し返されるぞー!
なんて言う言葉にそれなと返しながら未だやってる告白劇を見る。
ついには玲志まで入ってきて、何かもうよくわからないことになって来ている。
ていうかやはり、二年も知ってたんだなあというかきっと部には知れ渡ってるとは思うけど、
まさか桃浪にまで茶化されるとは思わなかった。
まあ二年が仲良しなのは当たり前のように知ってるが、桃浪がこういうキャラだとは思わなかった。
あまり人の恋愛に口出すイメージが湧かないし。

「不思議そうな顔してるけど、俺が先輩茶化してるの気になるの?」
「おう、お前は久津見みたく口出すイメージがねえんだけど」
「俺もそうだよ、あんまり人に言うの好きじゃないし女子じゃないから恋バナとかわかんない」
「だよな」
「でもね、なっきとは同盟組んでるから」
「はあ?」
「お互い実りそうで実らないようなもの抱えてんだよ、先輩お鈍いのね〜!」

実りそうで実らないって。
意味は何となくわかるけど、こいつもなのか。
恋に興味なさそうで楽しい学校生活優先みたいなこいつが?
なんか俺知ってるようで部のみんなのことよく知らないんだなあ。
俺自身このバスケ部の面々が好きだ、いいなあこういうのって思う。
ずっとこういう付き合いが続けばいいなあなんてのもよく思う。
俺自身高3でもうすぐ卒業だからこそ余計に思う。
こう客観的に見ると自分自身そんな好きな奴らのことちゃんと見てなかったんだな。
知ろうともしてなければ、ちゃんと見ようともしてなかったわけだ、冷たすぎるだろ。

何というか今気づくとかさ。

「ハニー俺が一番好きって言ってたじゃん」
「おー自惚れ始めたな、日向玲志」
「フルネームで初めて呼ばれた無理」
「じゃあなっきーは誰が一番好きなの」
「え、古谷小太郎」
「まさかの俺!嬉しい!!!」
「最近お手伝いめっちゃ頑張ってくれるからね、褒めちぎってやんよ!」
「有難き幸せ!!」
「えー俺だって最近頑張ってるじゃん!」
「ゆっけがどんだけお前に卵の割り方教えてもその気持ち悪い割り方治らないから嫌い」
「もう俺嫌だもん、教えるの」
「気持ち悪いが一番傷つくんだね…」

誰が好きなのって言葉に少し反応した。
そんなつもりがなくても、こんだけ持ち上げられれば意識しないほうがおかしい。
まあ夏貴がこんな形で俺のこと贔屓するやつじゃないのはわかってても無意識に期待してたんだろうな。少し胸がちくりと鳴った気がする。
ていうか何故そんなにニヤニヤしてこっち見てるんだよ殺すぞ。
まるで俺が振られたみたいに見てるんじゃねえよ、やめろよそういうところだよお前らがモテないの。つか夏貴お前なんでそんな笑ってんだよ、お前こそ笑うなよ。

「あらあ、好きな相手小太郎くんに取られましたけれどー?」
「ねえどんな気持ち?今どんな気持ち?」
「お前らがモテないのはこういう性格のせいかと思ったら片腹が痛い」
「寧ろ笑いすぎて片腹えぐれる」
「待って、ディスろうと思ったら冷静にディスられ返されたんだけど」
「落ち着け由之助、平常に見せてるだけだ。きっと心の中では大号泣だぞ」
「先輩たち醜いなあ」
「お前ら本当心が汚いわ」
「またヤングドーナツで振られる女の子たち可哀想」
「この話ずーっと蒸し返される俺が可哀想」

ずっとこんな感じでいいのになあ、今のままでも十分楽しい。
まあ確かに揚げ足取られるようで今の状況は嫌だけど、それでもこういうのが好きだなあって思う。
でもなあ、あんな顔されちゃあ何というかやっぱりちゃんと知ることから始めようってなるじゃん。
好きなんだよ、あいつの目元が緩みきった笑顔。心が暖かくなるんだ。
別に自分自身あいつのことそういう意味で見たことがないにしろ、あいつの笑顔には魅力がある。
だからみんな惹かれるわけだしな。

「夏、そろそろおやつにしようか」
「お茶入れてなっきー」
「あ、なきき先輩お手伝いするよー」
「はーい、じゃあおやつにしましょうねー。はじめ先輩行こう」
「あいよ」

でもやっぱり十分だと思ってしまうんだよな。


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