1

先輩のカバンからはみ出していたビデオのタイトルが知らない女の名前だったものだから俺が半乱狂になって問い詰めたところ、先輩の知り合いに無理矢理押し付けられたという理由に納得するまで1時間かかった。

最終的にはその知り合いとやらに先輩が電話して事情を聞いたらどうやらそいつが冗談半分で先輩のカバンに忍び込ませちった、ごめんねーというのんきな謝罪を聞いたところで俺もようやく冷静になってそういえば俺ですら引くくらい女の人に免疫のない先輩がこんなの観るわけないかと気づいて、さっきまで仲直りのセックスをした後にやることもないので俺が面白半分にAVの鑑賞会を始めたところだった。

「トシヤがさーこのAV女優がマジで抜ける! って言い張るんだよね…俺がお前と付き合ってんの知ってるくせに、あいつ」
「…まあトシヤさんはワケわかんないとこあるから。悪気のない冗談ってのはわかるけど」

などと話しながら事後のまったりした時間を過ごす。ただしAVを観ながら。先輩は本当に興味がないのかちょっと顔をしかめてたまに細目で画面をチラチラみるだけだ。俺も嫌悪するほどではないけど特にチンコは勃たない。

「3Pものかー…あ、乳首両方舐められてる」
「……お前も乳首弱いよな」

ちょっとだけ意地悪に先輩が聞いてくる。確かに俺は乳首が弱い。特に舐められるのが好きだ。あ、先輩に舐められたの思い出してちょっと勃ってきた。

テレビの中では演技なのか本気なのか女優も気持ち良さそうな顔をしている。

「……ちょっと、気持ちよさそ」
「――は?」

俺の独り言に先輩が耳ざとく反応した。

「いや、なんでもな」
「何、お前、乳首舐められたいわけ?両方同時に?」
「いやいやいやい――」

否定の言葉も聞こえていないのかわざと無視しているのか、先輩は悪巧みを思い付いた子供のような顔をして部屋を出ていってしまった。

あの顔をしたときの先輩は、やばい。
1/5

[*prev] | [next#]


page





×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -