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背中の痛みで目を覚ました。目を開けても、なぜか部屋の風景が目に入ってこない。まだ夜かと思って起き上がろうとしたところで両手足を動かせないことに気づいた。

「え、あれ?ちょ、――え?」

異常事態に脳はあっという間に覚醒したけど視界はまだ真っ暗なままだ。敏感になった触覚が、俺が両手足をベッドに磔にされたような体勢で、おまけに裸でしばられているということを伝える。寝慣れた布団の感触があるから多分俺のベッドだと、思う。

「ちょ――せん、ぱ…! カズ、カズ!」
「あ、起きた? ごめん、怖がらせた?」

トイレを流す音の後に、案外あっさりと聞きなれた声を聞くことができて俺は安心する。安心したけど状況はさっぱりわからないままだ。

「先輩、これなに? どうしたの?」
「何って…たまには趣向を凝らそうと思って」
「そんな、…っ! ん……ふ、ぁ」

声が近付いてきたかと思うと突然口内に柔らかいものが侵入してきて、キスされたと気付いた。気付いた時にはもう舌ごとかき回されて、心の準備ができてなかった俺はあっというまに思考を蕩かされる。

「…ん、最近マンネリだっただろ。お前も、っこういうの…好きっぽいし」
「っは、あ、そ…な、すきじゃ――な、」

しゃべりながら、首筋、肩、胸、とキスを降らせてくる。目隠しされて敏感になったからだが、すべてが不意打ちの刺激にいちいち過剰に反応してしまう。

「でも、勃ってる。――ほら、」
「うそ、――っああ! あ、やっ、せんぱい…っ」
そういっていつの間にか立ち上がっていたそれを緩やかに扱く。それもやっぱり不意打ちでかすかな刺激なのにいつもより断然気持ちいい。あれ、俺ほんとにこういうの好きなのか。

「ユウ……いつもより感じてる」
「っひぁ、あっ、や…あ」

いつの間にか耳元に寄せられた唇から囁くような声でくすぐられる。先輩も少し興奮しているのか上ずった声が色っぽい。

しばらく俺の身体をまさぐっていた先輩がおもむろに身体を離した。どこいくの、と尋ねても返事がなくてまた不安な気持ちが沸き上がる。カズ、と先輩の名前を呼ぼうとしたところで俺の頭上に上がってくる気配があった。

俺の頭を持ち上げると胡座をかいた足の上にのせられる。突然おかしな膝枕をされて戸惑っていると、俺の頭上からそろそろと手が延びてきて俺の体に触れた。

「先輩……っあ! そこ、だめっ…!」

延びてきた両手の指が俺の乳首に触れて、電気が走るような、甘い刺激が生まれる。そのまま、指のはらで軽く弾くようにされて、そのたびに体が勝手に跳ねてしまう。

「せんぱ、せんぱ…っあ、だ、め……あっあっ…!」

先輩の腕を掴みたくても紐の余裕はあんまりなくて、届く前にピンと張ってしまう。上下に小刻みに弾かれ、少し引っ張ってこりこりと捏ねられ、時に爪で先端を軽く引っ掻かれると思わず紐にすがりつきたくなる、もどかしくて、切ない快感が襲う。

こんな体勢で乳首をいじられるのは初めてで、まるで知らない人間の愛撫のように感じられる。それがまた新鮮で、恥ずかしくて、羞恥心と背徳感が俺の熱を煽っていく。「っはぁ……! 先輩っ――も、チンコ、触っ、てぇ…っ」

見えなくてもわかる。俺のチンコはもうはち切れそうなほど勃起していて、じくじくと腰の辺りから疼きが背中を這ってくる。

いつもなら乳首を苛められている時点で我慢できずに自らしごいてしまうのだけど、今はそれができない。逃げ場のない熱がどんどん溜まっていく。だけど俺の頭上にある気配は、変わらずに乳首を弄りまわしてそこを動こうとしない。

「んっ、んあっあっ! お、ねが…も、無理…―――、ぁ、っんぁあああ!?」

突然、亀頭全体が熱いもので覆われて、俺は絶対に与えられないと思っていた快感に腰を打ち震わせた。

「っ――っあ! ひぁッ! っな、で――っああ!! だれ、誰!?」

ありえない。なぜなら俺の頭にはまだ太ももの感触があるし、その太ももの持ち主は俺の乳首をねちねちと捏ね回しているからだ。普通の人間ならそんな体勢から口が届くわけがない。

だとしたらこの部屋に3人目がいるということだ。そんなの聞いてない。大体先輩はどっちなんだ。いやそもそもどっちかが先輩という保証もない。俺は半ばパニックになりかけて稼動域の小さい手足をバタバタと暴れさせる。

「やだ! ――カズ、カズ、カズ!! どこ? カズどこ!?」
「あーはいはい、大丈夫だから。ユウ、ここにいるよー」

チンコを舐める舌が止まり、足元からなんとも能天気な声が聞こえた。安堵すると同時に怒りが込み上げてくる。

「カズ、いい加減にしろ! なんなんだよこれ!」
「だから、趣向を凝らした、って言ったじゃん? 大丈夫大丈夫、信頼できるやつ呼んだから。しかもテクもあるから安心して」

俺の頭上から声を殺して笑う気配がする。漏れる声と太ももの感じで男なのはわかった。何考えてんだよ。誰なんだよマジで。俺の気持ちを全く考えていない先輩の行動にますます腹がたってくる。

「先輩、もういい加減――っはああっ! あっ、やめっ、んっぁはァッ――あ…!」

怒鳴り付けようとした瞬間、合図でもしたのか同時に愛撫が再開された。知らない男の指が乳首をぞわぞわと撫で上げ、先輩の舌が亀頭を這い回り、先端をくすぐり、裏筋を扱き上げる。

先の愛撫ですっかり出来上がっていた俺は、すべてが不意打ちの快感に、なすすべもなく腰を跳ね上げ、腹をひくつかし、背中をひきつらせてだらしなく声をあげる。

「はぁあああ!! やっ、あ、あっ、んっグっ!! ――だめ、だめだめ、あっだっ、めっぇ――ッ!!」

先輩の舌は、いつもより熱を持っているように感じられた。誰だかわからない男の指も、変に慣れた手つきで確実に俺を追い詰めていく。あっというまに、腰の奥からほとばしりが上ってくるのを感じた。

「イ―――っあッあああああッッ!」

ドクドクと脈打つそれを、先輩が容赦なく舌で絞りとる。喉を鳴らして、俺の精液を飲む音が聞こえた。

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