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「いつもよりいっぱい出たんじゃない? おれのテクもまだまだ捨てたもんじゃないなあ」

男のテクは置いといても、濃厚な射精感だったのは確かだった。これまでは薬のせいで一度出しても次の欲望がむらむらと湧いてきたけど、今は身体中を包む倦怠感にふーふーとギャグに開いた穴から酸素を取り込む。

だけど男は力の入らない俺の体をいともたやすくひっくり返して、四つん這いにさせる。後ろ手にされているから、頬骨が固い床に当って痛い。おまけに自分の垂らした涎ですぐに頬が汚れて気持ち悪い。

「じゃあ今度はこっちねー」

そう言って、尻の穴にもローションを垂らしていく。わざと高い位置から垂らしているのか、ぽとりぽとりと付近に垂らされる刺激に、括約筋がいちいち反応する。

「あは、峰人くんのお尻の穴ひくひくしてるよー、かわいいね」

ぬるぬると孔の周りに塗りつけられて、不快感に声が漏れそうになるのを、感じていると勘違いされたくないから必死でこらえる。

「ほら、まずは一本目ー。入るかな?」
「―――っ! ふっ…ぅ!」

やがて男の指がそこに侵入しようと入口をまさぐりはじめると、薬を注射されてすら感じた痛みを思い出して身体がこわばる。

感じるにしても感じないにしても、とにかく力を抜かなければと必死で深呼吸を試みるけど、恐怖にわななく身体では引きつったような呼吸しかできない。

「そんなに緊張しないで。大丈夫、すぐには入れないよ」

今日はよっぽど機嫌がいいのだろう。これまでならとっくに男のモノをねじ込んでいたのに、薬を使っていないからという理由で俺を気遣うそぶりすらみせている。

男は後孔への侵入をいったん中断して、両手を俺の身体の前面に伸ばしてくる。すぐに乳首を見つけると、新しく指先に浸してあったローションをまたぬるぬると塗りこんでいく。

「ん、ひっ――あ、あ、ぁ…っ」

下を向いているせいか、いつもより乳首に血がたまって、敏感になっているみたいだった。指全体でぬちぬちと捏ねまわされるとびりびりとした刺激に腰が揺れ動く。

その腰を伸ばした二の腕で固定されると、尻の穴に生暖かいものが触れて俺は嫌悪感に全身を粟立たせた。

「―――っひ、ぁ! っんう゛ー! んん゛ー!」
「じっと、ひて、みねと、くん――ん、ちゅ、おいひ、」

考えたくないが、受け入れがたいが、男が肛門を舐めまわしている以外に考えられなかった。周りをねっとりとなぞられ、らせんを描くように孔に向かっていくと、入口をとがらせた先端でくすぐってくる。

寒気が止まらない。ぞく、ぞく、ぞくと上書きするみたいに次々と鳥肌が身体を覆っていく。

「ん゛ん゛! ひゃ、あ゛っ、ひ、や、は―――っ!」
「そんなに、ひもち、いい? っ…ここは、?」

肛門の下、金玉の上、なんていう普段なら存在すら知らない部位を舌でなぞられて尋常じゃないくすぐったさに腰が前に逃げる。頬骨がごりごりと音を立てるけどそんなことに構ってられなかった。

肛門とそこを何度も往復するように舐めまわされると、指先でころころと転がされる乳首の刺激と相まって、情けない声がひっきりなしに漏れて止まらなくなる。

「んー、ふーっ! あ、ぐ――っんん゛! ひ、あ…あ、あっ!」
「ふふ、薬つかった時よりもずっと感じてるね。そんなにうれしい?」

俺は必死に否定する。違う、これは気持ち悪いだけだ。体中を這いまわる電流も、ぞくぞくと波のように押し寄せる鳥肌も、なにもかも嫌悪感以外のなにものでもない。

感じてない。感じてない。感じてない。頭の中で呪文のように唱える。

「恥ずかしがらなくてもいいのに」

乳首への愛撫がやみ、代わりにペニスが握りこまれる。

「ほら、もうだらだら」

いつの間にかそれは固さをさっき以上にとりもどして、腹に付くほどのけぞっている。どうして、と脳が冷めていく前に、男の愛撫が思考をぐちゃぐちゃに塗りつぶしていく。

竿を緩く扱きながら、先端を掌で包み込むようににちゃにちゃと転がされて、もう何も考えられなくなる。

「っああああ゛! んふぅぅっ! んんん゛ッッン゛!」
「カウパーで床に水たまりを作っておきながら、よく否定できるね。わかるでしょ? こんなに固くて、僕の手の中でビクビクしてるよ?」
「―――っっんあ゛! …っ…ッッ―――ひ、ぁ゛」
「もう声も出せないくらい気持ちいい? 知ってる? 峰人くんのお尻の穴、もうゆるゆるだよ」

そう言って、ぬち、と舌を挿入される。入口をかきまわされると背筋が引きつって、上半身が宙に浮いた。

「んっ、ふ、…ぁ、みねとくんの、なか、あつ――」
「―――ん゛っ! っあ゛! ああ゛っ! ―――…っ!!」

ぬぽぬぽと舌が出入りするたびに身体が上下に跳ねる。嫌悪感以上の何かが身体を通り抜けるたびに、顎とかおでことかがガンガンと床に叩きつけられるけど、そんなことに構ってられなかった。
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