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「じゃ、頑張って自力で感じてね。僕も頑張るからさ」
俺を壁際に追い詰めて身動きをとれなくして、男が首筋に舌を這わせる。薬を注射された時はそれでぞくぞく感じてしまうのに、今は不快感しかわいてこない。
「怖いの? 健気だねー、そんなに怖いなら薬使ってあげてもいいのに」
「んー! ふっ、う!」
必死に首を左右に振る。俺に男がクスクスと笑う。
「僕のために頑張ってくれるんだね。ありがとう」
そうじゃない。別にそうじゃないけど口がふさがれていては反論もできず、反論したところで男の機嫌を損ねるだけだから何も反応しない。とにかく息を整えることだけに集中する。
だけど、胸に、ぬる、とした感覚に驚いてまたびくりと身体を跳ねあげる。
「ローションだよ、これぐらいはサービスしてあげないと」
そういって、乳首を重点的に、執拗なまでにローションを塗りたくる。人差し指の先端でそれぞれの突起をくにゅくにゅと押しつぶされる。先ほど噛みつかれた方からぴりぴりと痛みが走る。
「う、ぁ ―――っ」
「ぬるぬるで気持ちいいでしょ?」
親指と人差し指でつまむように持ち上げられる。だけど滑りやすい表面が、すぐに指の間から逃げて行ってしまう。何度も何度もそれをされて、乳首を扱きあげられる。
「――ふっ、ん、…っぁ」
「… 固くなってきたよ、」
気付かないうちに耳元に口を寄せられて、突然感じた息に情けない声が上がった。
俺の反応に気を良くした男の指は次々に格好を変え、違う角度から乳首を責めてたてる。
親指の腹で円を書くように先端をなぞると、もどかしい刺激に知らず腰が浮く。人差し指で上下にはじかれるといちいち身体がぴくぴくと反応する。両側からつまみ上げて、指の先をよじるように擦られると、いよいよ俺の口から喘ぎ声が漏れ出しはじめた。
「んっ、ふ、んぅッ――っぁ、あ!」
「いい子だね。ちゃんと自分で気持ちよくなれたね」
気持ち悪いはずなのに。男に乳首をいじられて、耳元でささやかれるなんて。やめてほしいのに。それでも視覚を封じられた俺の体は、男の指使い、息使い一つ一つを拾い上げていく。
「こっちも、ビンビンに勃ってる」
「――っん、ふぅぅうッ!」
ローションまみれの手が、くちゅりと俺のペニスを摩擦する。男の言うとおり、そこはすでに硬くなっていた。さわられたところがジンジンと熱を持ち始める。
「今日はいい子だから、一回出させてあげる」
そう言って乳首をいじりながらゆるゆるとペニスを上下に擦ると、予想以上の快感に、壁に持たせかけた背が勝手によじって逃げていく。
だけど俺は足首で縛られた脚を伸ばされて、その上に座られてしまう。男は空いている方の乳首も舐め転がしながら、俺に快感を押し籠めていく。
「イっていいよ、ほら――…ほら、」
「んん゛! ふ! ぐ、うっあ゛、んっ――んん゛!」
耳元で囁かれて、男に命令されたみたいに俺は精を吐きだす。しばし呆然としながら余韻に身体を震わせた。
ぼんやりとした思考で必死に現実を否定する。違う、これは無理矢理イカせられただけ、俺の意思とは無関係だ。自分の体の異変に気付かないふりをして俺はそう思い込む。
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