2.

面倒なことになった。
ようやく解放された俺は自分の席に戻り、コーヒーの香りとともにため息をついた。
売上高30%増、にも関わらず最終的な利益は20%減。流石に書類作成中に自分の手が震えるのを感じた。
それでもあの社長ならごまかせるのではないかと淡い期待をこめて出張申請の下に潜り込ませたが、流石に気づかれてしまった。

最近、社長本人のメディアへの露出も増え、なんとなくそれっぽいことを言うためにいまさら経営の本を読み始めたらしく、中途半端な知恵をつけてきたせいだ。
というか社長が決算書も読めないで今までどうやってこの会社成り立ってたんだ。

とにかく、自分の席で無残にも真っ二つにされた可哀想な決算書とにらめっこをする。
原因を突き止めろと言われたが、そもそも俺はただの人事畑であって財務分析なんかはお門違いだ。
寡占市場とはいえ、所詮は中小企業。書類仕事はなんでもかんでも俺に回ってくる。
本格的に事業を拡大したいならもっとちゃんとした人材を雇った方がいい。

そんなことを考えつつ、上の空で眺めていてふと気づくことがあった。
前年に比べて売上高が上がり、利益が下がったということは、単純に言えば製品を作るのにかかった費用が増えたということだ。と、いうことは前年に比べて増えている費用が何かをひとつひとつ見ていけばいい。簿記3級の俺でもわかる簡単なことだ。

「研究開発費ってこんなに予算とってたか…?」

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