「なぁレイさんだっこして」
「お前もう抵抗無いな」
江戸川君達がまたしても事件に巻き込まれ、毛利探偵が解決し、事情聴取を取るといういつもの流れの中。
早く終わって出てきた江戸川君が真っ先に吐いたのは先に書いたこの言葉だ。
いつしかどんな理由だったか忘れたが、一度抱き上げてからこうして「だっこ」とせがまれるようになった。
別に構わないが、こういう子供っぽい事は言わないしないという印象だったのだがもうそれは良いのか。
毛利探偵達が来るまでな、と屈んで江戸川君の体に腕を回す。
そしてしっかり支えて立ち上がる。
「これの何が良いんだか」
「何かわからないけど良いんだよ」
別に立っていなくてもいいだろうと設置されている簡素なベンチに腰掛ける。
江戸川君は俺の膝に座る形となるが、不満そうな声が飛んでくる訳でも無かったから良しとした。
それどころかご機嫌そうだし俺に負担が掛かる訳でもないからまぁいいかとそのまま適当に撫でておく。
……いくら大人びていても、子供なんだよな。
軽い体を抱えていると、しみじみとそう思ってしまう。
何故あのような事(毛利探偵の件とか)をしているのかわからないが、かなり深い事情があるのだろう。
江戸川君は騒ぐタイプじゃないし、俺もどちらかと言えば無口である。
静かな空間。
確かなのは、呼吸音、心臓の音、暖かさ。
「レイ刑事の心臓、トクトクいってる」
「そりゃ、生きてるからな」
「……そうだね」
[*prev] [next#]
1/2
戻る