#8



……で、この無限ループから抜け出すにはどうすればいいわけ?
ゴチルゼルにお願いすればいいわけ?

考えあぐねていた所で、ゴチルゼルがサリィから離れた
何処かへ向かっていく黒い影を静かに追いかける

辿り着いたのは建設中のスカイアローブリッジの上だった

「待ってくれーゴチルゼル!!」

サトシの呼びとめる声にゴチルゼルが振り向く
ゴチルゼルの笑顔はすっかり消え、最初にあった時のような表情に戻っていた

ゴチルゼルに世界の出口を尋ねる
しかし、答えてくれる気配は無い
それどころか攻撃を仕掛けてきた

「サトシ!
ゴチルゼルとバトルをすれば、脱出できるヒントが掴めるかもしれない!!」

「わかった!
ツタージャ、君に決めた!!」

ツタージャは持ち前の素早さで連続攻撃を避けて、鋭い動きで反撃をしかける
しかし、守るで防がれてしまう

「たじゃぁっ!!」

勢い付いたリーフブレードを叩きこむも、テレポートでかわされた

それからも、影分身で翻弄されたり、連続攻撃をかわしたりとゴチルゼルは着実にツタージャの体力を削っていく

「強い…!」

「きっと思い出の世界を守ろうとしているんだ!」

「……必死なんだろうね、ゴチルゼルは」



その時だった
軽い目眩が起きて、目の前が真っ暗になった
すると、薄ぼけた世界が広がった

「……??
ここは……」

ぼやけているが、水上バス乗り場だと分かった
周りを見ると、橋が出来ている
戻ってきたのか?

そう思ったが、違った
ゴチルゼルが目の前に居る
どこか寂しそうな顔をしている

「ゴチルゼル?」

声は届いていないらしい
そこで、また目の前が真っ暗になった


目を開くと、アイリスとデントに支えられていた
……あ、あれっ??

「ヤヅキ、大丈夫かい!?」

「急に倒れたのよ!
デントが間に合わなかったら頭を打っていたかもしれなかった…」

「え、えっと……??」

何が起きたのか分からない
今のは……何?
前にもこんなこと、あった気がする

そこでバトル中だったのを思い出し、顔を上げる

激しい攻防が繰り広げられた末、ついにゴチルゼルが決着をつけようと動いた
お互いの技で破壊し尽くされた器具、材木などをサイコキネシスで浮かべた

となれば、やることは一つだろう

「くっ、やべぇ……」

「みぃ!!」

シェイミがマジカルリーフを放つが、また守るで防がれる
このままでは、と唇を噛んだ時だった

「ゴチルゼル!!?」

霧の中から女性の声が聞こえてきた


「ゴチルゼル、私よ
わかる?」

「ゴゼ……?」

「私よ、ゴチルゼル、サリィよ!」

あ、サリィってあの?
あーなんとなくだけど面影あるかも

サトシ達が驚きの声を上げる中、サリィがゴチルゼルに話しかけた

「ゴチルゼル、私もこの世界に迷いこんでしまったのよ
霧の中のスカイアローブリッジを歩いている内に……
ここは貴方の、思い出の世界なのね」

サリィが柔らかく笑う
懐かしんでいるかの表情である
それに、どこか嬉しそうだ

そして、サリィはここを……水上バスのあった場所を離れてからのことをゴチルゼルに話した
親類の叔父の元へ引っ越し、ドクターを目指したこと
寄宿舎のある学校に転校したこと

それらを話してから、サリィはゴチルゼルの手を取った
そして、ドクターの資格を取り、この近くの病院に研修医として配属されたから戻ってきたらしい

「あの頃、本当に楽しかったものね
普通の人にとっては何でもない事だけど、私達にとっては大切な思い出
あなたも覚えていてくれたのね、橋ができる前の生活……
ありがとう、本当にありがとう」

でも、とサリィは続ける

「もう、あの生活は戻ってこないのよ
貴方がどんなに想っても……」

[……サ、リィ]

ゴチルゼルは涙のにじむサリィの目に手を伸ばした
そっと拭うと

「ゴゼ!」

にこりと笑ったゴチルゼルに呼応するかの如く、ヤヅキ達を囲っていた霧が流れていく
一気に霧が晴れ、陽の光が差した
眩しさに目を細める

「………霧の中も涼しいけど、やっぱ太陽の下が一番気持ちいいな」

[ミィも!光合成たっぷりできる]

「そこかよ」

少し上を見ると、橋が完成している
元の世界に戻れたのだろう

戻ってこれた事に、皆が笑顔を浮かべた

あ、気づいたらゴチルゼルどっか行っちゃってるし

「ヤヅキ、大丈夫かい?」

「何がだ?」

「さっき倒れたでしょ?
貧血とか寝不足とか?」

「あー……大丈夫
白昼夢?みたいなの見てた」

サトシとアイリス、サリィさんが話しているのを目端にあの映像を思い出す
なんだったんだろうか、あれは

前にもあったきがするぞ

……また後で考えよう、うん

面倒事は後回しでおkおk


サリィさんに昔の話を聞きながら、橋を渡ったサトシ一行だった





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