ふつうナンバープレートチェックして終わりだろ
というツッコミはここでは無しで







日課のようにポアロに向かう途中。
けたたましいサイレン音に辺りを見渡した。
どうやら来た方向から聞こえてくるサイレン音はだんだん大きくなっている。
周りの人達も辺りを見回していて、誰かがあっと声をあげた。

一台のワゴン車が凄い勢いで道路を走っている。
その後ろには赤色灯が見えた。

カーチェイス、って所か。

そこにワゴン車の行き先にパトカーが現れた。
挟み撃ちである。

それをかわそうと、無理やり小道に入ろうとしたのか。
車は回転しながら、ガードレールに突っ込んだ。
私の、目の前で。

ふ、っと力が抜けた。













「あれは……」

ポアロのアルバイト店員、安室は買い出しの帰りだった。
さっきからの騒ぎはこれだったのか、と道路を眺めながらなんとなく思った。

派手に壊れたワゴン車と、連行されていく人間が数人。
逃走犯が事故ったって所か。

店の前じゃなくて良かったと十数メートル先のポアロに目を向けるやって、ふと足元を見た。
足元というより、端の方。

見覚えのある鞄が放置されている。

「これは……」

最近、本を読む場所としてポアロを利用する女子高生がよく持っていたもの。
中身を見ると、彼女……米津凪が読んでいた本と財布などの貴重品が入っていた。

何故こんなところに、と拾いあげて辺りを見渡す。
置きっぱなしにするのもいけないが、持っていくのもどうだろうか。

本人はどこだ。
ポアロに向かう途中でこの事故に巻き込まれたのだろうか。

いやでも、さっき下っ端の警官が怪我人なしと報告している。
となると……。

その時だった。
小道から苦しそうな呼吸音が耳に届いた。
すぐに覗き見ると、あの子が建物の壁に手をついた状態で座り込んで、苦しそうに呼吸をしていた。

「大丈夫ですか?」

反応は無い。
ないと言うか、反応できる余裕がないと言ったところか。
見たところ過呼吸。
驚いたが、それを表に出しては悪影響かもしれない。
いつもどおり、優しくを心掛けて声をかけた。

「僕がわかりますか?凪さん。
ポアロの店員の安室です」

大丈夫ですよ、とやさしく声をかける。

服が汚れるのも構わず座ると、膝の上にその体を倒して乗せた。

「大丈夫です、ゆっくり呼吸してください。
深呼吸深呼吸」

上手く呼吸が出来ないらしい凪さんの口に軽く手を当てる。
背中を擦りながら吸って、吐いて、とゆっくり呼吸するように促すと、だんだん治まってきた。

「……だいぶ落ち着いてきましたね。
自分で抑えられて、偉いですよ」

「っ、ありが、とう……ございま、す」

「いいえ」

ぐったりしているが喋れるようにはなった様だ。
良かった、と安堵した。






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