「ここじゃ何ですし……移動しましょうか」

「え、あの」

「もう動ける、なんて言わせませんよ。
かなりの倦怠感に襲われている筈ですから」

読まれてら。
言おうとした事を当てられ、すこし気不味くなり目を逸らした。

そして次の瞬間、体が浮いた。

「ぅひゃっ!?」

「毛利先生、ご在宅でしょうか……」

「え、あ、安室、さん」

「何ですか?」

「…………ナンデモナイデス」

抱き上げられた。
まさかの横抱き。
所謂、お姫様だっこ。
くっそ恥ずかしい。

いや、確かに歩くのも辛いかなぐらい怠いですけど……この、公開処刑は、如何なものでしょうか安室さん。

なんとかしようにも身動きが取れずどうにもならない。
あぁもうどうにでもなれ、と安室さんの体に頭を預けて目をつむった。











突然止んだ抵抗に腕の中の存在に視線を落とすと、眠るかのように大人しくしていた。
拒否権は無いと悟ったのだろうか。

にしても、傑作だった。

人質にされても焦りを見せない冷静な凪が初めてかなりの焦りを見せたのだ。
照れか恥ずかしさから来るのだろうが、顔も少し赤かった。
なんだ、普通の子じゃないかという感想を抱きながらポアロの前を通り抜けて2階に上がる。
梓さんにガン見された。
あとで質問攻めにあうのだろう。

「毛利先生、失礼します」

鍵はあいている。
だが誰もいない……なんと不用心な。
ソファーを借りて横たわらせ、とりあえずとケータイに連絡を入れていく。

反応がすぐにあったのはコナン君だけだった。
すぐに帰るね、と送られてきたメールに安堵する。
僕はまだバイトが終わっていないし(あと一時間位だけだけど)、凪さんを店に連れて行く訳にもいかない。

「凪さん、ここで少し待っていてください。」

こく、と頷いたのを笑顔で応え、自分の上着を体にかけてから買ったものを届けに下へ降りた。






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