01
すがすがしい程に晴れ渡っていた空は、もう既にオレンジを越し、藍色に近づいていた。
噴水の縁に腰掛けて俺はそんな空をぼんやり眺める。
――ここコーネリアは城下町という事もあって大通りでなくても結構な人が行き交っている。
市場ともなれば、自由に動けないくらいの人ごみ。
……要するにスリをし放題って事。
でも今日、手に入ったお金はたったの五十二ギル。
これじゃパン一個くらいしか買えないよ……。
もう今日は最悪だ。いいカモはいないしやっと見つけたと思ったら袋の中に五十二ギルしか入ってないし。
そんな最悪な気分の俺を更にどん底に落とすやたらと楽しげな明るい声が横の方から聞こえて来た。
そちらを向けば俺と同じくらいの年の男子が数人で楽しそうに歩いている。
……俺だってホントは……。
ううん、嘆いたって何も変わらない。俺とあの人達の生き方が違っただけの話しだし。
……でもやっぱ悔しいよ……あの人達には帰る所もあるし家族や友達もいる。俺にはその中のもの一つもない……。
ちょっと不公平すぎる……。
……もしかしたら俺の記憶が無くなる前はあったのかな。
でも多分、違う。
俺には無かった。
あの時ハッキリわかった。
俺は捨てられた。
そう、あの時。
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