黎黒(くろくろ)原作 | ナノ
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キッド海賊団に強制残留させられ早ニヶ月。
慣れぬものも慣れるわけで。
板に付いてきた生活。

船を降りて自由に行動させてもらえるようになった。
船員達のだれかが必ず同行するのが決まりだが。
それでも船に缶詰は辛い。

「よし、買い物行く」

キラーも買い物に行くと言うので着いて来いと言われた。

「人が多い。迷子にならないようにな」

キラーという男は過保護だった。
お母さんと呼んでしまわぬように気をつけている。

「うん。手を繋がなくて済むように気をつける」

ジョークも飛ばせるくらいの仲になった。
やっぱ話しやすい。

「情報ではハートの海賊団が上陸してるらしい」

「え!?嫌だ!会いたくない」

「……知り合いか?」

「結構知り合いだったんだが、避けてる」

「そうか、なら、避けていこう」

配慮されて、感動する。

「キラーは気のいいやつだな」

「お前も話していて気持ちが良い」

褒められて照れる。

ーーとん

ぶつかって謝る。

「おっと、すみません」

「いや、こっちこそ」

お互い謝ってすれ違いざまに会釈する。

「ん?あれ?え?おい、おい!」

さっきの声の奴がまたこちらへ呼びかける。

「はい?」

「おまえ、ティファか?」

「え?確かに私はティファですけど」

知り合い?と顔を覗き込む。
無難な服を来た男。

「なんでキッド海賊団の殺戮武人と居るんだ?」

と、言うと後をついてくるように一歩前に寄る。
いきなり名前を呼ばれて困惑していると、キラーが庇うように立つ。

「すまないが、こいつはおれの連れだ。絡むのなら他をあたれ」

「え、いや、こいつと知り合いなんだけどな。もしかして分かんねェ?おれだよ。ハートの海賊団の」

「あ、あー、ん。私服だから分からなかった。キラーこいつ本物のハートの海賊団の一人だ」

「会ってしまったが良かったのか?」

会いたくないと事前に言っていたので、心配して聞いてくれたがあいたかない。
気まずいなんてレベルじゃない。

「んー。ローに黙っといてくれよ。今訳ありな身でな。バレたらこの島が荒れるっていうか」

「なに言ってんだ?」

知られる前に退散しようかと思案しているとキラーは色々察したのか爆弾を置く。

「今、キッド海賊団預かりになっている。用があるなら好きにすればいいが、手を出さない方が良い」

「いやいや!キラー!?」

勘違いさせるような言葉選び!
案の定、船員は目を開いて驚き、ティファの腕を掴む。

「ちょ、え!?」

引っ張られるままにつれられていく。
走らされているがキラーは軽く並走しているので追いつかれている。
これは助けられているのだろうか。

「穏便にしよう!な!?別になにもされてないって」

「どうせ保護するんならうちに来い」

走りながら言われても応えにくい。 
それに、今はキッド海賊団の船に下働きとして雇用されていて、抜けられるわけがない。

「仕方ないな……少ししたら迎えに行く」

このままでは埒があかないとキラーは告げてから追うのをやめる。
これは宣戦布告していくとかじゃないよな?
私、トリガーじゃないよな?
怖くなってきた。

「向こうに船が停めてある」

電話をしながら案内されるけど、助けてほしいわけじゃなかったんだが。
嫌な予感するし、嫌だ。
行きたくないと梯子を渡るのを拒否していると、後ろからテノールが突き刺さる。

「なにがあった」

「あー、ロー……なんでもない。勝手にあいつが暴走したってだけだ」

驚く必要はない、もうハートの海賊団のテリトリーなのだから。

「なんであいつの船に乗っているのかはちゃんと説明してもらう」

ここで説明すると言い切ると、ローは刀を肩にかけたまま聞く状態になる。
そんな真剣に聞くような話でもないけどな。
深刻でもないし、結構気楽に構えて欲しい。
なんでキッド海賊団の船に乗っているのかを説明し終わると、眉間のシワが凄かった。

「奴隷となにが違うんだ」

「期間限定のボランティアだ」

「その期間がいつか分らねェんだ。永遠にあいつらの船に乗せられてもボランティアなんて、ほざけられるのか」

キツイこと言われてるけど、私に選択肢なんてないし、連帯責任なんだから。

「いっそ戦利品としてお前を貰い受ける方が現実的だ」

「はぁ?お前に関係ないだろ」

溜息を吐きたくなるような理論。
やれやれと呆れているとローはニヤリと怪しさ満点で笑う。

「愛人」

「ッ」

息が詰まる。
一瞬出された単語だけで冷や汗ものだ。

「おれは関係ないんだとまだ言えるか?」

「私はそのことについてなにも認めてないし、お断りだって言った」

無駄だろうが、反論する。
ローは気にせずに進める。
なにやらどこかに電話し始めると切った。

「アホな事はするなよ。島の人達が迷惑だ」

「血で血を洗う事も確かにありだが、時間の無駄だ。おれの時間も有限。手間を少しかけるくらいが妥当だ」

一人で脳内完結させるな。
私にも説明しろよ。

「お前の船に乗るなんて嫌だからな」

「下働きみたいな真似をさせないとしたとしてもか?」

「お前、だって……また、あーいうことするだろ」

小声で、消え入りそうな言葉を告げる。
唱えられたセリフにローはくく、と喉を震わせる。

「しない理由はないな?」

「じゃぁヤダ。乗らない。キラーと話す方が良い」

言った途端、ローが刀を抜いたので後ずさる。
しかし、後ろに壁があり止まる。

「フラれたな死の外科医」

耳に流れるこの声を既に聞き慣れ、馴染んでしまっている。
キラー、と呆気に取られて後ろを見やる。

「殺戮武人……そいつはおれのだ。返してもらう」

いやいや、お前のじゃねー!
と、叫びたいが相手は刀を抜いていていつでも切りにかかれる。

「私ごと切る気だなお前!」

「暴れるのなら、そうする」

ローは当たり前だろと言い捨て、更に構える。
海軍来たらどうするんだこいつらは。
海軍なんて対処したことないぞ。

「私を巻き込むな。頼むから止めてくれ」

2人は態勢を解かない。
こうなったら。
2人が同時に動き出したところでつるりと指輪を撫でた。

ーーゴチッ

豪快にお互い頭を打ち合ってぱたりと倒れる。
駆け寄るとうすく寝息を立てていた。
ハートの奴等に2人を運ぶように言うとキラーは中に入れられないと言うので、外で面倒を見た。
2人とも綺麗に寝てしまっている。


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