お店で黙々と片付けをしてお酒の注文が入る度に持っていく。
夜になると漸く満足したのか立ち上がる面々。
や、やっと。
くたくただ。
「ありがとうございましたぁ」
語尾がフニャフニャになるが仕方ないっしょ。
キラーが会計に来て払う。
「頑張ったな」
「その言葉はマジで染みる」
小声で感謝した。
涙が出そう。
見送るとぐったり座った。
女達を運ぶのは無理なので要員を呼ぶ。
船に帰って女達は叱られる事になる。
詫びに行くべきか、静観しているべきかと議論が交わされていると、キッド海賊団から電話がかかってきた。
電話を取られていたみたいだ。
策士が居た!
恐恐と船のまとめ役が出る。
男が出たのだが、内容は宝を寄越せとのこと。
トレジャーハンターの船と知ってのことだった。
だから関わるなと言われていたのに。
皆して意気消沈していると女達が逃げる算段を立てていて、皆で止めてグルグル巻にした。
その女達と価値のある宝を数個持って行きまとめ役が向かうこととなる。
ティファは宝を持つ一人になった。
他は行きたがらないので雑用に押し付けたのだ。
トレジャーハンターの癖に怖がりだろ。
「来たか」
船員の男が気付いて船に通す。
ティファは逃げる方法を持っているので良いが、タイミングは図らないと駄目だ。
「ここに出せ」
グルグル巻にした女達と宝を差し出す。
女達までか、という言葉に逃げ出そうとした事を伝えて好きにしろと伝えた。
「二度目だ。今回で」
キッドは出てこなくて、キラーが担当みたい。
確かに争いじゃないからね。
「すみません」
迫りくる勢いで謝る。
元凶にも頭をゴリゴリ地面に押し付けさせて謝らせていた。
「謝られても困る」
オタカラも失い、こちらは大赤字だ。
「ここに居る全員に責任を取らせる」
おい!聞いてねえ!
来たくなかったのに!
突然の事にまとめ役はわかりましたと頷く。
は?そこは私以外はどうか!とか言う所じゃん。
船やめたい。
でも、トレジャーハンターの船って簡単に見つからないんだよな。
「問題を起こしたやつにキツイ労働をさせる。残りのお前たちには精々雑用だ」
キラーが舐められていると船員達が言っていたので目に見える罰を与えるためだと言う。
なんの慰めにもなってねえ。
トレジャーハンターの船に乗る為にやってきたのに、海賊船に乗らされるとは。
沈んで居ると縛られた女達は連れて行かれ、残った私達は船の中へ案内される。
お前はこっちだと街で会った知り合いのキッド海賊団の一員に別行動させられた。
数人と違う所へ配属でもされるのかとげんなりした。
女達と離れた距離になると知り合いが同情した目で肩を掴む。
「聞いたぜ。一歩遅かったとか」
「とっくに事件は起きてた。トラブル起こすなって酸っぱくいったのによ」
愚痴大会に以降。
知人なので気が楽だ。
「お前と乗るのは楽しそうだからおれは嬉しいぞ」
「理由が理由だから私は喜べないっ」
「まァまァ、キラーがお前用に仕事を用意してるから安心しろ」
「人質なのは変わんねえだろ」
「そう悲観すんな。キッドの頭は今回怒ってない。どちらかというと仲間達が許せなかったみたいだ」
とんだとばっちりである。
むくれていると部屋の前で止まる。
ここで寝ろとのこと。
「おれと相部屋だ」
「私は腐っても女だぞ?」
「5人部屋は狭くて寝にくいからな」
「別に特別扱いしなくても良い。それよりも、なにをさせられるのか気になって眠れない」
聞きたくて、早口で尋ねる。
はは、と軽く笑って男はまた違う所へ連れて行くと案内された。
何故か私だけ一人に分けられている。
「キラーがキッドの所の部屋を片付けてほしいんだとよ」
どこが簡単な仕事なんだ!?
明らかに難易度可笑しい。
「お前らからしたら船長だから平気だとして、なんの関係もない私が片付けやるのは酷くないか?」
「出来るだけ頭が居ない時間に割り振るって言ってたぞ。それにキラーも様子を見に来るとよ」
優しくもなんともない提案。
嫌だ。
「もっと緊張しない仕事したい」
くそ、トラファルガーといい、ユースタス・キッドといい、変な縁が出来ていく。
不意にローの愛人発言を思い出して手を擦る。
「お前の部屋片付けるからなんとかならないか?なんなら肩たたきとか」
「あっはは!無理だと思うぞ」
提案内容に笑ったのに却下され、ぐぬぬとなる。
「お前なぁ、他人事だから楽しんでるだろ」
「いやいや、こんなの滅多にないから新鮮で微笑ましいぜ」
仕事が終わったら酒を飲もうと言われ、初日にキラーの傍に行くように足される。
「私だけ可笑しいだろ……」
なんでキッドの右腕が監督するんだ。
と、思ってキラーの隣で言われたことをしていたのだが、うんちくの話になってかなり盛り上がってしまう。
キラーって博識だったな。
「醤油に銅を入れたら……」
「知ってる綺麗になるんだろ。でも醤油勿体なくて知っててもやろうとあんま思わないんだよな」
「それもそうだ」
「ラップが剥がれないときは」
「あァ、それは」
こんな感じて話題が尽きない。
キラーって話分かるヤツだ。
ローはローで博識だけど、変な事言うから会いにくくなってしまった。
「結局私達はいつまで船で働くんだ?」
思い出して、聞く。
聞きたいことがもっとあるけど。
キラーは肩をすくめる。
船員達の気が済むまで、らしい。
そりゃ、難しいところだ。
「私、ただの雑用なのに」
普通、こういうのは主要メンバーが盾になるべき。
なのに、あいつらは。
「おれはお前を待ってたから都合が良かった」
「私なんて別に強くないぞ」
「くく、そういうわけじゃない」
会話を続けているとキッドの所にタオルを持っていく様に言われる。
今キッドはシャワールームに居るんだそう。
出てきたらどうするんだ。
「キッドはかなりいいらしいから、オススメだ」
「自分とこの船長なのに、進めんな」
海賊って明け透けでそういう話題になると簡単に恥ずかしいことを言ってのける。
「後腐れなく楽しんでみたらどうだ」
「私はそういうの好きじゃない。それに」
間に合ってる。
もう、枠埋まってたりする。
あのトラファルガーのことだ。
そういう雰囲気はいらない。
海賊って3大欲求にも躊躇ない。
「わかってる。ただ言ってみただけだ」
どうやら冗談だったらしい。
「海賊に言ってもアレだが、セクハラだぞ」
「そうか、セクハラか」
キラーはまた笑う。
「タオルはおれが持っていこう」
男はもう終わりだと休憩するように言う。
従って部屋へ行く。
部屋へ戻ったらパンツだけ履いた同室の知人が座っていた。
「おおおい、お前……せめてズボン履けよ」
「おー、お前のその反応を見るためだけに待ってただけだから、今履く」
「悪魔だてめぇはよぉ」
別に女だけの船も下着とか裸とか普通に居るけど、男は見慣れないから動揺した。
「頭の裸はどう思う」
「なんで野郎と男の裸体について語るんだよ」
「ガールズトークにはそういうのないのか?」
「もっとエグいの話してるけど、私は参加しない」
「真面目だねー」
けらけらと笑う。
真面目じゃない奴が周りに多すぎて真面目になるしかなかっただけだっての。
「頭は常に半裸だが、おれ達もそういう服装多いんだがな」
「仕事終わりの後に、キッド海賊団の豆知識聞かさるんだな私」
遠い目で男のトピックを聞かされた。
ティファは無駄な知識が3増えた。
prev next【03】