▼ 旅立ち (1/3)
「まずはリシアに向かうといい。そこで冒険者登録をするんだ。」
バルトがなおも回りつづけていた二人に言う。
そこでやっとロランは手を離す。
レイラはまだほてっている顔を隠すようにそっぽを向くが、その場から離れようとはしなかった。
「冒険者登録?」
ロランが素っ頓狂な声を上げる。
「…は?! あんた冒険者を目指すとか言っておいて知らないの?!」
ロランの発言を聞いたレイラが目を丸くした。
「世界を自由に旅できる―ってとこまで読んで、あとは難しそうだから読まなかったんだ。」
ロランは苦笑する。
呆れた…とレイラは深く溜め息をついた。
「…冒険者登録とは、正式に冒険者として認めること。冒険者登録をせず冒険をする者もいるが、冒険者登録をすれば冒険者ギルドから依頼を受けられるようになる。」
バルトが説明する。
「冒険者ギルドとは、何人かで構成された団体のこと。冒険者登録をすることができる。世界中にいくつかあり、リシアにはその中の一つがある。ちなみに依頼とは、ギルドに寄せられる、頼み事のこと。賞金のかかった魔物を狩る討伐依頼、指定された物を取ってくる採集依頼、じゃんけんに勝ってくれとか、ゲームの相手をしてくれとか、時々しょうもない依頼もあるがな。」
バルトの博識さに思わず感嘆の声がでる。
のはロランだけで、
「元冒険者なんだから知ってて当たり前よ。ってか文献を読んでたら分かること。」
レイラは半眼でロランを睨みつける。
「と…とにかくっ、リシアに行けばいいんだな師匠!」
「まぁ…結論を言えばそうだが、リシアはここから南東。ずっと歩いても一日はかかるぞ?それに様々な魔物が出現する。」
バルトの発言にロランはうげぇとなる。
「…そういえば、リシアに配達するっていう野菜があったわね。」
ぼそっと呟いたのはレイラ。
「じゃあ、頼んで連れていってもらえば…!」
「……さて、質問だロラン。この場合、冒険者ならどうする?」
ここぞとばかりにバルトが問う。
「分かってるぜ師匠。これが"依頼"なんだな?配達までの護衛の代わりに、俺をリシアまで送ってくれるっていう"報酬"が出るんだろ。」
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