▼ 夜遊びとは感心せんのお (1/8)
こちらに背を向けた小さな女の子が、育ての親から教わった歌を口ずさみながら、楽しそうに抱えたスケッチブックに何かを描き込んでいる。
肩に当たるか当たらないかの長さで切り揃えられた緑の髪が、彼女の動きに合わせ、右に左に跳ねていた。
その様子を幾分離れた場所で眺めていた僕は、意を決して彼女に近寄る。
「何してるの?」
彼女のクレヨンを握る手が止まった。
ふわりとした笑顔を浮かべ、僕へと振り返る。
「絵本を描いてたの」
そう答え、抱えていたスケッチブックをこちらに差し出してきた。
そこに描かれていたのは小さな子供特有の、拙いながらもどこか可愛らしいイラスト。
大きな街で、何人かの登場人物が楽しそうに笑いあっている。
「みんな仲良しでしょ?」
緑の髪の子と赤い髪の子が遊んでいる絵を指差し、これは私と君なんだよ、と彼女は微笑む。
「この人は?」
群がる人々から少し上の辺り、おそらく空を飛んでいるのか、羽を携えた金髪の髪の人を差して僕は尋ねる。
そんな僕に彼女は悪戯っぽく笑いながら答えた。
「その人はね―――」
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