Song of Wind | ナノ


▼ 風の民の少女 (1/4)

「族長!本当に彼女を風使いに選ぶつもりですか?!」

広いとはいえない部屋。
そこにまだ若い男の声が響く。

男の視線の先は黄と草色の衣に身を包んだ、彼より幾分高い位置で椅子に座る老婆がいた。
老婆は閉じていた瞳をうっすらと開き、男を見つめた。
その歳老いてなお力強い族長の瞳に、男は一瞬たじろぐ。

「…では他に誰を風使いに選べと?」

族長の言葉に男は口ごもる。

「我々の中に、もはや風と通ずるものはいない。
風の民は名ばかりのものとなってしまった」

族長がそう言えば、その場にいた誰もが気まずそうに視線を移ろわせる。

「……しかし、彼女は16歳だ!
使命を負わせるのにはまだ、若すぎる…!」

「では、おぬしは世界が滅びてもいい、と」

声を上げた初老の男は声を詰まらせる。

「10年に一度、風の民は風使いを選び、風使いは風を運ぶべく世界を巡る。
世に風を運ぶことができなければ、その時は―――よもや忘れた訳ではあるまい」

男は青ざめた顔で座り込んだ。
族長は民の顔を見回す。

「風使いは風と通ずることができなければ務まらぬ。
我々の中にそれが出来るのはいまや、ただ一人のみじゃ。
――リーンベル・クロックスを風使いに命ずる。よいな」

族長の言葉に異を唱える者はもはや、いなかった。

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