最後のキーは東京へはいった…|
まもなく東京は消える
この世の最後の月曜日
今の日本は、平和に見えて平和じゃない。 私たちは、作られた折の中で、作られた自由の中で生活をしている。
音楽を聴きながら、カフェテラスでPCをたたいていた。 これが私の日常。 そんな人は、あたりを見回しても山のようにいるし、私一人だけではない。
なのに、
『何の御用でしょうか、警察庁警備局公安特殊三課、 THIRD-iの南海かおるさんと、加納生馬さん』
公安警察が私に何の用だ。 最近はおとなしくしてるのに。
「俺たちのことも調査済みってわけだ」 「一緒に来てください、局長が呼んでます」
THIRD-iの局長、苑麻孝雄。 涼しい顔の裏に何かを常に企んでいるような、食えない男。
『THIRD-iに捕まるようなこと、してないですけど』
「おいおい、俺たちを知ってるってことはそういうこったろ、嬢ちゃん」
これ以上、居座られて変な噂が広がりでもしたら面倒だから、しぶしぶとついていった。 連れていかれる車内で考える。
THIRD-iのシステムに入り込んだのは随分と前のことだ。 父親と一緒に働いている人たちの情報を知ろうと思った。そんな、軽い気持ち。 小学校3年生のときくらいだっただろうか。
自分にハッキングできる能力があるとわかってからは、 それが面白くていろんな重要施設にもぐりこんだっけ。 ロシアの諜報機関とかが結構セキュリティが堅かったな。 ハッキングすることで、私たち一般人にはひた隠しにされていた情報とか、テロの計画とか、そういったことも知り得ることができた。 でも、これ以上深入りすると戻れなくなると思って、 中三のときにはもうハッキングはやめていた。
気づいたら、THIRD-iの本拠地に着いていて、小会議室に通された。
「初めまして、高木渚さん。私は、THIRD-i主任の霧島だ」 「君が、高木の娘か……私は局長の苑麻だ」
局長と主任、そんな二人が待ち構えていた。
『高木渚です、今日はなぜ突然連れてこられたのでしょうか』
この時はまだ、こんな突拍子もないことを言われるなんて思ってもいなかった。 「君は、ハッキングをしたことがあるね?当時小学3年だったか、君がうちのサーバーに入り込んだとき。正体を知ったときは驚いたよ。確か君のコードネームは、ゴーストだったかな?いろいろな施設に入り込んでは、システムサーバーに書かれた自身のデータをすべて削除していなくなる。小学3年でそんなことができるのは、君と、君のお兄さんの藤丸君くらいじゃないかな」
「それから、君はいろいろな格闘技をしていると聞いたよ、お父さんからね。確か、「空手に柔道、合気道、テコンドー、キックボクシング、剣道、狙撃、だったかな」ああ、そう、そうだったね」
苑麻局長と霧島さんが交互にしゃべる。 正直、そんなに調べられてるとは思わなかった。
『よくご存じで』
「そこでだ、君をTHIRD-iの一員に加えようと思っているんだよ」
一瞬、ぽかんとした顔をしてしまった。 何を言っているんだろう、この人は。 THIRD-iに加える?私を?いや、この人たちは私が高1ということは知っているはず。 無理だろ、どう考えても。
『どういうことでしょうか』
「採用方法はね、どうとでもなるんだよ。まあ高1だから、正規の職員ってわけにはいかないけどね、雇員とか非常勤職員とかね。今君の力が必要なんだ」 「東京が、日本が消えてしまう」 「ロシアの極東で町が一つ消えた。 これと同じことがもうすぐ東京で起きようとしている」
その話から、導き出されること、それは。 東京がテロの標的になっているということ。 町が一つ消える?一体どうやったらそんなことができる。
「我々は何が起きたかを探っている」
ウイルステロ?それとも核? いや、そんなものを使ったら、すぐに世界中に知れ渡って大騒ぎになっているはず。
「君にそれを協力してもらいたい」 『協力?こんな、小娘に何をしろと』
私には、そんな大それたことできる力なんてない。 「これから始まるであろうテロ組織との対決、君が敵の手に渡れば脅威にもなる。だから、君はTHIRD-iに入ってハッキングとテロ組織との対峙をしてもらいたい。チーム渚、君が班長で5人班員をつけよう。君には我々と同等の権限を与える。そのため公安の知識、すべてを覚えてもらう」
この人たちは、本気だ。 本気で高1の小娘を、使おうとしている。 それだけ、私が考えているより危険な状況っていうこと? それだけ切羽詰まっているっていうことなのだろうか。
『断ったら?』
東京を守る。 警察官でも、なんでもないこの私が。 今までちょっとPCが得意な高校生ってだけだった私が、テロ組織と対峙する。 そんな重荷を背負わせようとしているなら、拒否権だってあるはずだ。
「君を逮捕する」
やっぱり、大人は汚い。
『っふ、分かりました。最初から、断る気なんてありませんよ。東京を守るなんて、大それたとこは私にはできませんが、遥と藤丸を守る。それができるなら、なんだってします』
私が信じれるものは、この2人だけだから。
「わかった、よろしく頼む。お父さんには、私から話しておきます、後で南海に中を案内してもらってください、そのあとデスクに連れていきます」
そういって霧島さんは出ていった。
「君は、のってくれると思っていたよ。正義感が強いと聞いていたからね、はい、これがうちのIDだ。ここにいるときは常につけていて」
まったく、準備がいいことで。
私の知らないところで、世の中は動いていた。 自分がテロの脅威にさらされるなんて、今まで考えたこともなかったのに。
局長からもらったIDを眺めながら、初めて、怖いと感じた。
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