建前の上では、就業時間は八時五時ということになっている。
そんなもん保証されているのはぴっかぴかの新入隊員くらいで、ヒトヒトマルマル集合ヒトゴーマルマル解散なんて日もあればマルサンマルマルから三トン半に揺られて二週間山のなか、なんてこともある。
「烏間さん、帰らないんですか」
「ああ、輸送と需品に色々回さないといけない手がある」
某所。陸上自衛隊駐屯地内、普通科本部管理中隊補給倉庫である。
出入り口付近のホワイトボードに「野外用ベッド×1+スリーピング(115)×1烏間」と書き込みながら、補給陸曹は「大変ですねえ」とため息のように言った。
確かに。
需品科から給水車に水缶を、輸送科からくそ大量の卵を運搬できる三トン半をそれぞれ借用しなければならない。無関係な補給陸曹には言えないが、牧場にマヨネーズ工場に砂糖会社その他ありとあらゆるお膳立てが必要だ、というのも、事実だ。
「体に障らないよう気をつけてくださいね? そうだ、PXで飯食ってきたらどうですか、ご一緒しますよ」
「いや……」
そこまで言って補給陸曹は勝手にはっとして勝手に納得してから、
「いやすみませんね、烏間さんは、ラブワイフベントゥでしたっけね」勝手ににやにやした。
烏間は答えない。なぜ弁当のことを知っている。あれを食っていたのは主に校内だぞ。
「隠したって無駄ですよ〜、烏間さんいい女ができたって、もう嫁かよってくらい尽くしてくれてて弁当がくっそうまそうだとかって、流れまくりっすわ! いや、流石もてる男は噂も良く回りますね! あのWACちゃんどもの阿鼻叫喚の地獄絵図見せてやりたかったっすわー!」
「そんなもの見たくないな」
剛胆に笑う補給陸曹に、眉間にしわを寄せたまんま烏間はいつまでも本当のことを言わない。
教えてやればいいのに。
雉島織子とは別れてしまったのだと。
補給陸曹→色々物を管理してる人。烏間さんより階級が下。
WAC→女性陸上自衛官
ヒトヒトマルマル→11:00 ヒトゴーマルマル→15:00
PX→駐屯地の中の売店 なぜか大体ファミリー○ートが入ってる。
なくても良い話しだし陸自ネタがしつこかったためボツである
暗殺