▼ブルーファイアともしもし主


 ガッとかゴッとか、そんなかんじのおもっくそ痛そうな音が出た。
 最悪にも向こうずねから。
 置きっぱなしのちゃぶ台だって凶器になる。

「ぎゃあ!!」

 つったっておもっくそブチ当てたのは悲鳴を上げたりんこじゃない。
 当の本人は顔色一つ変えてないのに、りんこは大暴れ一歩手前の大慌てで救急セットを取りに走る。転んで二次災害になりかねない勢い。

「ぶぶぶぶブルーファイアだいじょうぶ!? 痛くない痛いよね痛いよ! うわああちょっと待ってすぐ冷やすもの!」
「りんこ、大丈夫だから落ち着け」
「でも、でも、でも」
「大丈夫だ」

 まあたぶん一般の目で見ればブルーファイアの目つきは「黙れぶち殺すぞ」というダーティーな副音声が実にお似合いなのだけれど、実際の所ブルーファイアはパニクるりんこを諭しているだけなのだ。穏やかに。

「でも」
「どうってことない」
「けど、」
「この程度でどうこう言うほどヒーローはヤワじゃない」

 やっとこ納得したらしい。
 家中ひっくりかえしてかき集めた包帯と赤チンと箱ごとの絆創膏、湿布にアイスノンを抱き抱えたままりんこは、あほったれな呆け顔で「そっか……」





 安心一杯のため息と一緒に寄せ鍋の具のような救急セットを貰って、ブルーファイアは自宅へ向かう。
 扉から扉への小距離移動、落ち着いた速度で外廊下を歩いて鍵を開けて戸を開いて戸を閉じて鍵をかけて、

「ぐおおおお……」

 ようやく素直になれた。

 まあそりゃ、ヒーローだって、痛いもんは痛い。

一撃

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