ダツジン
「なんかさ、今日はハグする日なんだってよおっさん」
「あんな挨拶まで記念にするとは、今の世の中なんでも記念日だな」
「あんな挨拶って、おっさんした事あんのか?」
「その国によっては挨拶として必要だからな、」
ガイドや学者仲間とは何度かしている。と唯の思い出として口にしただけだったのに、横に座る男は何故だか不機嫌そのものだ。
「ずりい」
しかもずるい等と言う訳の解らない事まで言い出した。
「俺はおっさんとハグした事ねえ」
「するかたわけ」
「ずりーぞおっさん!俺もおっさんとハグしたい!」
ほら俺は何時でも準備万端だ!と勢いよく椅子から立ち上がったダツラは更に勢い欲腕を広げた。確認したい訳ではないが、確認しなければならないと言う義務感でジンダイは口を開く。
「何だその格好は」
「俺もハグ一発したいからおっさんカモン!」
「何故お前とハグしなければならんのだ!」
「余所じゃ挨拶なんだろ?じゃあ俺とも挨拶したっていいだろおっさん」
「お前と?……何か減りそうだから断る」
「減るもんじゃねーだろうがおっさん!」
「否減る、多分HPが減る気がする!」
「おっさんの体力なんか吸わねーっつの!寧ろ俺の英気とやる気が養われるからおっさん是非俺に一発元気を分けてくれ!」
「貴様私の元気を吸い取る気ではないか!」
なんだよ、話の路線戻すんじゃねーよ!とまるで子供が駄々をこねるように喚き散らすダツラが気付かぬ程度に溜息を零しながらジンダイは静かに椅子から腰を上げる。
「元の木阿弥じゃねーか!ケチケチ、おっさんの―」

「喚くな、」
言葉の割に柔らかな音がダツラの耳を擽ったかと思うと
「いい歳したおっさんが抱擁の一つで拗ねるな、たわけめ」
ぽんぽん、と帽子越しに頭を軽く叩きながらジンダイが背中も軽く叩いてくる。その動作が何を示しているのか、一瞬頭が追いつかなかったけれど此れを逃したら男が廃るのは直感で解っていたから俺の体はとても速く動いた。
おっさん、おっさん、頭の中でジンダイを呼んでいるつもりだが腕の中のジンダイの顔が熱くなるのを感じた。若しかしたら実際呼んだかもしれねえ、なんかこっ恥ずかしいなソレ!
まあいい、今は解らない過去よりも腕の中におっさんがいるという事実の方が大切なんだから。


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