束の間の休息 |
赤黒く煤けた暖簾を潜ると、湯気がもわっと顔にぶつかる。 「味噌大盛り」 手際良く作られる様子に目を奪われる。 麺を解しながら大きな寸胴鍋に入れ、茹で上がる間、スープを作る。 麺を掬い力強く湯を切り、優しく丼へと滑らせ、具材を綺麗に盛り付け、汗だくの店主が笑顔で丼を置く。 割り箸を取りパキッと割ると麺を掴み上げ、一気に吸い上げた。 熱々な汁を絡めた太麺 程良いコシと複雑ながらも美味なスープの兼ね合い 微妙で絶妙なバランス あっという間に丼を空にする。 ポケットに忍ばせていた800円を店主に渡し席を立つ。 再び赤黒い暖簾を潜り、束の間の休息から現実へと戻っていく。 嫌味のように味噌ラーメンの匂いを纏わせながら。 前頁│次頁 |