鍋 |
漂う匂いでわかる 夕食会場へと入り 案内された席へと いそいそと座った 4人がけのテーブル席には 真ん中にドンと置かれた鍋 それも真ん中が盛り上がり 帽子のような形をしていた 鍋の周りには漬けダレ肉と もやし玉葱人参ピーマン 南瓜とジャガ芋の薄切りが 鉄皿に彩りよく並んでいる カチリとカセットコンロの火を点ける ボッと青い炎が鍋の底を炙り始めた 既に塗り込まれた油 立ち上る白煙が合図 鍋の縁の溝に野菜を敷き詰め 中央の盛り上がりには肉山を ドサドサと漬タレごと乗せて 肉に火が通るまで暫し待つ キメの細かい泡を浮かべ 金色に輝く気泡を含む液 一気に喉へと流し込んで 赤茶の肉を見つめて呟く 「やっぱこの鍋じゃないとね」 通のような言い方に笑みが零れた 前頁│次頁 |