▼ vol.6
車内で琉夏くんからのチューするだなんだの攻撃を繰り返し受けながらも、なんとか美ら海水族館に着いた。
駐車場に車をとめ、4時過ぎとはいえまだ熱さをとどめたアスファルトに降り立つ。
アスファルトの熱気が私の不快感を少しだけ煽る。
「ほら、奏。ほっぺたでいいから、チューさせなよ。」
そんな気分な時に、こんなことを言いながら私の進路を邪魔する琉夏くん。
ねえ、駐車場から出るのに一体何分かかってると思ってんの。
ここはどこぞのレッドカーペットか。
「だー!!もう、人の目の前うろちょろしない!はい、まっすぐ歩く。ちゃんと進んで。まっすぐ歩かないと置いてくからね、私は早く水族館に入りたいの。」
「あれー奏、ちょっと怖いよ?怒らせちゃった?」
しまった…またやってしまった。
目的が目の前にあるときに、少しでも邪魔されるとついつい尖ったぞんざいな態度をとってしまう癖が出てしまった。
この態度、前にも注意されたのに…あの頃から全然成長してないんだな、私。
「どしたのー?奏。置いてくよー。早くおいで。」
すでに歩を進めていた琉夏くんが、立ち止ってる私に手招きをする。
「琉夏くん、ごめんね。」
「えー、何がごめんなの?そんなことより、ほらつっ立ってないで早く早く。」
気づいてて知らないふりしてくれているのか、それとも本当に気づいていないのか謎だけど。
でも、“そんなこと”って言ってるってことは気づいてるよね。
ここは琉夏くんの優しさに甘えておこう。
「よーし、琉夏くん走るよ!もう4時過ぎてんだから急ご!」
頭を左右に一度大きく振って、勢いよく駆けだした。