「琉夏くん、遅いよ!こっちこっち。」
「遅いよって…奏が急に走り出すからだろ?あ、なにこの魚の像。水族館に来ましたー!って感じだね。」
わくわくするね、と言って、ゲートに置かれているジンベエザメのモニュメントを指さす琉夏くん。
うんうん、確かに。このモニュメントを見たらそう思うよね。
全力でジンベエザメがブワッと泳ぐさまを切り取ってるもんね。
琉夏くんは、初めて見るものばかりで楽しいのかいろいろなところを見てきょろきょろしだす。
「ねーねー、奏。ここって、こんなに広い土地なのに水族館しかないの?」
「昔はね、ここ遊園地だったんだよ。観覧車やジェットコースターもあったの。小さいころよく連れてきてもらったなー。でも、私は『ちびっことりで』っていう遊具が大好きで。ネットが張られててそのネットの上でとび跳ねたりする遊具なんだけど、それが大好きだったの。それこそ、朝から晩までっていうくらいずっとちびっことりでで遊んでた。トランポリン感覚で楽しかったなー。」
「へえー面白そう!水族館出たら行ってみよう。」
「…そんな琉夏くんにとても残念なお知らせがあります。ちびっことりで、年齢制限だか体重制限だかがあるの。『ちびっこ』っていうくらいだから、琉夏くんは…残念だけど対象外です。」
「精神年齢はちびっこだよ、俺。だから、奏一緒に行こう?」
「そんな…デートにお誘いするように格好つけた感じで屁理屈言わないの。ちびっこたちの遊び場なんだから、ヒーローは遠くで見守っておかないと。」
「ちぇっ。格好つけてもダメだったか。あ、ねえねえ!あの島は何?山の上が出っ張ってるよ!」
水族館の入口に向かうと見えてくる海に浮かぶ小さな島。
その佇まいは、島がお客さんの目に入るように計算して水族館を作ったのではないかと思うほど。
今の時間だと、夕日が水面に反射していて島自体も輝いているように見える。