>> [5]寝顔にキス

「翔さん?…あれ?」

今夜もいつもと変わらぬ遅い時間に帰ってきて。
そんなに疲れている様子は見られなかったけど…

私がお鍋をあたため直しているほんの数分で、
ソファーにもたれて眠っている。

元々そんなに寝つきが良い方ではなかったと思うから…
今夜はよほど、疲れていたのだろう。

寝るにしてもさすがに一晩中ソファーでというわけにはいかないから
一度は起こさないといけないんだけど。
とりあえず、少しの間だけでもと上から毛布を掛けてみる。

「きれいな寝顔…」

悔しいくらいまつげ長いし。
色も白くて、整った顔。

……だからアイドルやってるんだと言われたらまぁそれまでだけど。

こんなに熟睡してるなら。
と、ついイタズラ心に火がついて。

前髪を漉いて、目を覚まさないかもう一度確認。
規則的な寝息は、先ほどから変化は無い。

「おやすみなさい」

そっと。
自然なままの赤く艶めいた唇に触れて。
顔を離す。

この瞬間に起きて捕まるのも嫌だけど…
本当にぐっすり眠っているのも、何となくつまらない。

ならばもう一度、と。
唇の先で翔さんの上唇を優しく啄ばむ。

私の王子様は。

「……お姫様のキスじゃ、目覚めないの?」

ねぇ?

微動だにしない彼に、ため息を吐いて。
キッチンに戻ろうとした時右手が何かに掴まれる。

「もう終わり?」

「やっぱり、起きてたんだ?」

「寝てた方が良かった?」

ぱっちりとした大きな目を開いて、翔さんは笑う。

「ふふ。寝てる時なら色々できて楽しいって思ったけど、無反応はつまんないなーって」

「ふははっ。ワガママだなー」

「鍋あったまったけど。食べる?」

「もういいや」

「え?」

起きたのに食べないの?
という言葉を発するよりも先に。

私の身体はいとも簡単にソファーの中に沈む。

「しょ、……さん?」

「お姫様のキスで、目覚めたので。責任とってもらおうかなと」

「ふふっ」

その独り言も。
ちゃんと、聞こえてたんだね。

「どう?」

いたずらっぽく聞かれても。
返事はYes以外にはありえないでしょ?

翔さんを見上げながら小さく笑って。
返事の代わりに瞳を閉じた。




-END-


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(一番新しいweb拍手夢です。半年以上使われていたので新しい読者様はこの作品しかご存知無かったかも…?
良くある展開だったりしますが…彼女からするキス、というのがポイントかな)


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