そいつは急に俺の目の前に現れた。

それは俺がレッド寮の自分の部屋でデッキの調整をしていたときのこと。始めたのは夜だったが、もう夜が明け、朝日が差し込んでいる。

「これでいいか…」

俺は調整を終え、授業に備えて一休みしようとした。その時、

「のわぁぁぁぁ!!?」

外から叫び声が聞こえた。何事かと思い外へ出ると、そこには

「誰か降ろして下さい〜!!」

何故か男子の制服を着た女子生徒が木の上で幹にしがみついていた。するとその女子生徒は俺がいることに気付いて、

「あの!そこの君、お願いだから僕を助けてくれないかい…?」

涙目だった。このまま放っておけるはずがなかろうに。俺はそいつの下まで行くと、大きく手を広げた。

「ちょっと、どういうつもりだい!?」

「ここに飛び降りろ!受け止めてやる!」

するとそいつは、首をブンブン横に振った。大きく振り過ぎて落ちそうになる。

「それは危な過ぎだ!!それに……いし…」

「危ないのはお前の方だ。さっさと飛び降りろ」

俺がそう言うと、そいつはためらいながらもやっと決意を決めたようだ。「いくよ…?」と聞か
れたので俺は首を縦に振る。

「えいっ」

目を瞑りながらも飛び降りた。




ここまでは良かった。体勢は。しかし問題は飛距離。そのまま真下に飛び降りればよかったものの、そいつは前に飛んだ。おかげでそいつの膝がちょうど俺の顔面へ来る。避けようと思っても、もう遅い。

「あ」
「ぐほっ」

思った通り顔面へクリーンヒットだ。あまりの衝撃で意識が遠退く。


最後に聞こえたのはあいつのただ慌てる声だった。

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