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以下ちょっとしたおまけ。
↓
私はおもむろに両手を広げた彼をぽかんと眺めた。そのまま静止した相手も、私をじっと眺めて一言。
「……俺には?」
何が? と返しそうになったがすぐ分かった。ああ、この人はハグされたいのだと。
というのもついさっき、私はもふもふで大きなキャラクターの着ぐるみを見つけて存分にハグしたところだった。
「…………」
付き合っていてなんだが、この人は無口な男である。もっと主語(それ以外も少ないけれど)を言ってほしいし、そこでケンカしたこともある。
ただ、私は目を見るとなんとなく彼の気持ちが分かってしまうし、彼の希望なら出来る限り叶えてあげたいな、なーんて思ってしまう。やだやだ、惚れた弱みにつけこまれてるよ私!
「はいっ! これで合ってる?」
お望み通り、正直合ってるかどうかは知らないけどぎゅっと抱き締めた。お店の中なので結構恥ずかしい。対して彼はそっと抱き締め返した。ぼそっと耳元で囁いてくる。
「ありがとう」
……合っていたらしい。よかった。けどこれ、この状態、何? 何故かこのありがとうで私の羞恥心が強化された。
もういいかと思い、さっと離れると彼はちょっと名残惜しそうな顔をしていた。いや、これ以上バカップル状態はやめとこう。
「深い意味はないんだけど」
「……うん?」
「着ぐるみに少し嫉妬したから」
「そ、そうだったんだ。って、え?」
流れでそう思っただけかと思っていたけど、嫉妬!? 着ぐるみに嫉妬したからのあれだったの?
予想外の話に慌てた私を彼はまた眺めていた。そしてその後、彼はおもむろに両手を広げることが増えたのであった。
(2021/6/23)