理事長と不良女子生徒

注意。モブ視点です。





理事長と不良女子生徒







僕の席の隣は奥村燐という女子生徒だ。

最初の印象は「あ、可愛い」といったものだ。正直、クラスでも一、二を争うくらいの美少女で僕は入学早々ラッキーと心の中でガッツポーズを決めた。
ただ、自分でもイケてる角度で挨拶をしたとき「あ、宜しく」と随分と素っ気ない返事が返って来た。

緊張しているのかな?と思ったけど、誰に対しても同じ返答で僕は安堵した。
だけど一ヶ月経っても彼女は周りと打ち解けようとはしなかった。
既にクラスメイトは仲の良いメンバーとつるんでいて、僕も新しい友達と一緒にいた。

休み時間、窓近くで友達と談笑していると視線は奥村さんに向かう。
相変わらず一人だ。傍には女子達のメンバーがいるのに、彼女を見ようともせず話しかけようとはしない。
いや、このクラスの女子達も始めは声をかけていたんだ。奥村さんも無視はしないで応じていた。でもおしゃべりな女子達にとって会話が大事なのか、奥村さんはやはり孤立している。

それでもクラスでやけに目立っているのは、彼女が美人だからだ。

隣の席だから、授業中ちらっと横見みたら瞳の色は青だった。
多分、ハーフだろう。そういえば肌はやけに白いし人形みたいに整った顔立ちをしている。
頬杖をつく仕草は妙に色っぽくて、授業の内容が難しいのか眉を寄せている。

やっぱり奇麗だな、可愛いな。
自然と顔が緩む自分がいて、頭の中はお花畑。だから先生に名前を呼ばれたときは気づかなくて、我に返ったときは驚いたあまり、椅子から転んでしまった。
やってしまった。周りは当然笑い出す。先生が渋い顔をして、僕は恥ずかしくて俯いた。そのとき、くすっと微笑む声がして隣を見上げると。奥村さんが「大丈夫か?」と僕を見下ろしていた。一緒に転げ落ちてしまった筆記用具も拾ってくれて、僕は赤面した。

なんだ、優しい人じゃないか。
僕は奥村さんの新しい一面を知ることができて嬉しくなる。
彼女は美人で、あんな細い腕にどこにそんな力があるんだと疑う位に運動神経がいい。ただ勉強は苦手なようで、常に授業中は教科書やノートと睨めっこしている。

そして学園生活も二ヶ月を過ぎると、僕は驚くべき光景を見てしまった。
なんとあの奥村さんが学食で男子生徒と一緒に食事していたのだ!!

顔は知ってる。入学式のとき、新入生代表に選ばれた入試トップ。
名前は・・なんだっけ。入学式の前夜に徹夜でゲームしていて半寝していたから覚えてない。眼鏡だけど、身長高いな。地味だけど顔立ちも整っている。
悔しい思いをしたけど、僕は奥村さんに声すらかけられないから何も悪くは言えない。しかも同じ弁当を食べている。実に美味しそうだ。羨ましい。
まさか・・恋人とか?美男美女カップルはお似合いだ。でも嫌だ!僕は受験や正月にしか頼らない神様に祈った。

「あれ、奥村くん。一緒にいる子誰だろ・・」

二人を見ていたのは僕だけじゃなかった。
女子生徒達がヒソヒソと話している。あ、そうだ奥村だ。奥村雪男。同姓?
でも奥村って苗字は他にもいるし、同じ学年でも探せば見つかると思う。ただの偶然か?と思いきや・・。

「ねぇ、知ってる?特進科の奥村雪男君って奥村さんの弟なんだって」

「うっそーっ!全然似てないじゃん。っていうか双子だったんだ!」

「でもわかんないよ?頭も顔も似てないし。親の再婚とかじゃん?」

なるほどね〜と僕は聞耳を立てて情報を仕入れた。
女子ってほんとこういう浮ついた話好きだよな、思いつつ僕はほっとしていた。
なんだ、姉弟なのか。だから同じ弁当だったんだ。悔しい思いをして損しけど、僕も奥村さんの弁当を食べてみたいかも。ここの学食も美味しいけどさ。

春が過ぎて夏を迎える頃、中間テストがやってきた。
普通科とはいえ、名門である正十字学園は偏差値が高い。
僕も地元の中学にいた頃はそれなりに優秀な方だったけど、ここでは普通レベル。寮では予習復習の繰り返し。
成績結果は親に伝達される訳で、油断できない。奥村さんはテストが終わった後、燃え尽きたように真っ白だった。

彼女のテスト結果は、惨敗だった。
平均点以上とれた僕は隣でホっと息をついて、ふと思う。あんな点数をとって、よくこの学校に入れたなぁ・・・と。
赤点をとった生徒は他にもいたけど、奥村さんは全教科赤点だった。
特進科の首席である双子の弟とは全然違うようだ。僕は項垂れる奥村さんを横目見て、思わず吹き出したくなる。

だって、がっかりする顔も可愛いんだ。
また雪男に怒られるぅ・・と呟く声に、潤んだ青い目。ヘの字になる唇。
落ち込んでいる仕草も、やっぱり可愛いなと思う。

そう思うのは僕だけじゃなくて、周りの男子もそうだった。
特進科や普通科にいるどの女子より奥村さんは美人だ。それにお高く止まっているプライドまみれのお嬢様より良いと好評価。
家事万能で料理もできる。ただし勉強はできない。そこも可愛いとツボで、密かに奥村さんの人気は上昇にある。

ただ、男子達が盛り上がる中で女子達にとっては面白くない訳で。
奥村さんは女子達に声をかけられることなく、相変わらず孤立している。
しかも中間テストや日頃の授業に追いつけていない彼女の成績に不満を持つ女子生徒が、ある問題を抱えて来た。

「ねぇねぇ!大ニュース!奥村さんって理事長の親戚らしいよ。だからこの学校に入学できたんだって。ゴリ押しの特別入学だって先生達が話してるの聞いちゃったっ」

「えぇ!?最悪じゃん。私、この学校に入る為に塾入れて頑張ったんだよ。ずるいな〜親戚だからって」

「でも納得だよね。勉強できないし、育ち悪そうだもん」

最後の言葉にはイラァ、としたが女子達の気持ちはわからなくもない。
僕だって、親の期待に応える為に塾でしっかり学んで入試に合格したのだ。それを理事長の親戚だから、という理由で何もせずに特別入学した生徒がいたならば不正だと反感を持つのは当然。
でも、妙だ。奥村さんの双子の弟は奨学金で入学している。余程優秀でない限り得ることはできない。それを女子生徒達も気づいたのか厭らしい笑みを浮かべて言い出した。

「まさか、理事長と奥村さんってデキてるのかな」

は・・・・!?
んな訳ないだろっ!一体、いくつ離れてると思っているんだ!
え〜っとえ〜っと・・・は!理事長っていくつだ!?そういえば、あの人いつから理事長として就任しているんだろう。
多分、三十代くらいか?でもあの服装はちょっと・・・うん、そこは考えるのはよそう。

「いやいや、それはないでしょ。だってあの理事長だよ」

「でもさ〜。入学式が終わった後、二人が一緒にいるところを見たって目撃情報があるんだよ。それに理事長室だって限られた人しか入れないのに、奥村さんって顔パスだった。私、見たもん」

「・・・引くわぁ。つまり愛人ってこと?」

口では嫌だぁ、と言いつつも話す表情は小悪魔的に楽しげだ。
僕は彼女達に嫌悪感でいっぱいだった。憶測にしか過ぎないのに、よくそこまで悪口を言えるものだ。

遠い親戚なら顔を合わせることくらい普通だろう。
でも、理事長はかなりの資産家な訳で、親戚なら充分に援助されるだろう。
奨学金など必要ないはず。
それでも弟の方は奨学金得て一般入学。姉の方は特別入学。これを聞いて気にしない方がおかしい。

彼女達がわざと言いふらす様に話しているので、男子達の耳にも当然入っている。彼らも愛人疑惑や不正入学たる内容は不快に感じる訳で、奥村さん人気は下がった。
女子達の噂は恐ろしい程に他のクラスにも広まって、彼女が廊下を歩く度に白い目で見られたり、くすくす笑われたりしている。

奥村さん本人は何も言ってないのに。
皆、酷いなぁ。でも僕は心の奥底ではライバルが減ったことを喜んでいたんだ。

教室で奥村さんはやっぱり一人だった。

噂がたってから、彼女に声をかける生徒は誰もいなくなった。
彼女本人も妙な視線に気づいたようだったけど、何も言うことはなかった。なんていうのかな・・こういうのに慣れている、そんな感じがした。

ある日、奥村さんの様子がおかしかった。
放課後、机の引き出しや鞄の中身を確認して何かを探しているようだった。
珍しく切羽詰まったような必死な顔で、隣の僕に「おまもり知らないか?」と訊ねて来た。特徴を聞けば手作りでどこにも売っていないもの、らしい。

そういえば、鞄にいつも付けていたような気がする。
僕は知らないと応えると彼女は肩を落胆させて「わざわざごめん」と返した。
謝る必要なんてないのに、と僕は彼女の為に何とかしてやりたいと思った。
でも、そのおまもりは一体どこに落としたのだろうか。僕はお菓子を食べていた箱の包みをゴミ箱に捨てようとすると・・・・あった。多分これだ。

着物の生地で作られた、手作りのおまもりだ。
ただ紐が刃物のようなもので切られている。そしてゴミ箱に捨てられているということは、明らかに誰かの仕業に違いなかった。

怪しいのは・・やっぱり奥村さんを快く思っていない、いつもの女子メンバー達。

僕はすぐに拾って、埃を落とす。
じっと見て、閃いた。そうだ、これを渡せば話せるきっかけができる。
いつも一人でいるし、一緒にいるのは弟くらい。きっと寂しい想いをしていると思う。せっかくだからメルアドを交換しよう。

これはきっと神様がくれたチャンスだ。

さっそく奥村さんに渡してあげようとしたら、彼女は既に教室を出てしまった。
僕は慌てて追いかけると、気づく。そうだ、彼女は女子寮にいないんだ。
特別に双子の弟と旧男子寮に住んでいると女子達が話しているのを聞いたことがある。旧男子寮って、どこだっけ・・。

僕は階段で止まり、考えていると珍しい人物の声を聞いた。
奥村さんが廊下でうろうろしていると、白いマントを羽織った怪しい人物が・・・うん、間違えるはずもなく理事長だ。

「おや、奥村くん。どうしたんですか?」

「あ、メフィスト・・・」

え!?今、名前で呼んだ?っていうかメフィストって誰!?
ヨハン・ファウスト理事長でしょ?あ、でも親戚だから慣れ親しんだ意味の名前があるかも・・。
僕は壁に張り付いて隠れて二人の会話を盗み聞く。

「ここでは理事長とお呼びなさい」

「う、うん・・。その、お守りが見つからないんだ。しえみが、おれの為に作ってくれたのに。朝は鞄についていたのに・・」

「それはお困りですね。後で使いの者に探させましょう」

「でも祓魔塾まで時間あるし」

「そう焦らなくてもいいじゃないですか。ここは私の学園、すぐに見つけてみせます。祓魔塾が始まるまで、私の執務室でアフタヌーンティーでもどうですか?フランスの名店からケーキを取り寄せたんですよ」

「そうだな・・お前の方が詳しいし、任せた方がいいよな。うん」

理事長は奥村さんの肩を抱いて、歩き出す。

うっわ〜〜〜っ!!!?

何あれ!すっごい親しげだ!
あれってあり?え?え・・まさか本当に?
僕の脳裏には女子達の噂話が過る。愛人疑惑。いやいや、奥村さんが愛人とかない。年離れ過ぎているし。で、でも最近年の差婚とか流行ってるよな・・・。

二人は右を曲がり、理事長は鍵を使って近くの扉を開いて入っていった。僕はコソコソと追いかけて、壁に背をつけてこっそりと中を覗く。
って、え・・?僕は目を丸くした。だって、中には誰もいないんだ。今、理事長と奥村さん。この教室に入ったよな?
確かに両目で見た。うん、絶対に入った・・・はず。あの変わった理事長のことだから、隠し部屋でも作ってるのかもしれない。

でも、何度見ても普通の教室だった。
二人はどこへ行ったんだろう。奥村さんに渡したいものがあるのに。
僕は理事長が彼女を誘っていたアフタヌーンティーを思い出す。そうだ、理事長室だ。
あそこは決まった人しか入れないけど・・・うん、とりあえず行ってみよう。
奥村さんが帰るときに渡せばいい。


理事長室。
立派な扉を前に、僕は息を呑む。扉越しに置く方から声が聞こえて、僕は持参した紙コップを使って会話を盗み聞く。
なんか、不審者だな・・僕。親が知ったら泣くよきっと。

「学校はどうです?」

「別に・・・ふつー」

二人の声に、やっぱり理事長室にいた事に僕は安堵した。
あの教室からどうやってここまで通ったのか気になるけど。

「私は後見人兼兄として貴方が普通に学園生活を送っているか心配なのですよ」

理事長のため息交じりの台詞に僕はぎょっとした。

え、後見人?兄?
理事長と奥村さんが実の兄妹!!?え?ず、随分年の離れた兄妹ですね!
驚いたけど、愛人疑惑説が消えて僕はほっとする。ざまーみろ女子!
僕はにやっと笑ってガッツポーズをする。

「最近、貴方の周りには不快な噂が流れていましてね・・奥村先生も心配していましたよ。私が特別入学させた事を気に食わない教師が職員室で話していたところを、たまたま耳にした生徒がいたようで」

「・・・噂なんて中学のときだってそうだったんだし。おれは気にしねぇ。それに、お前の力で入学したのは事実なんだ」

「できる限り、対処しましょう」

「だからいいって・・でも一番心配なのは雪男だ。おれのせいで、あいつが悪く思われるのは嫌だ」

なんて優しいんだ奥村さん。
あなた天使だよ!天使!泥濘に咲く一輪の花だよ!女子達が悪意あって広めた悪口にも負けず、弟を心配するなんて!
これをクラスの男子達に広めたい。あぁ・・でもまた奥村さんに好意を寄せる男達が集まってしまう。

う〜ん・・・複雑だ。

「相変わらず弟想いですね、燐」

急に理事長の声音が変わる。機嫌悪そうだ。
しかも奥村くんだったのに、下の名前で呼んでいる。すると、ガタっと椅子が倒れる音が聞こえた。

「ちょっと、待って・・ここ学校で」

「ご安心を。理事長室です」

「あ・・だめぇっ・・」

甘く喘ぐ声に、僕はついいけないと思いつつ扉を僅かに開けてしまう。
奥の部屋には、理事長が奥村さんを執務机の上に乗せて抱き合っていて・・。



う・・・・うああああああああああっ!!



そして理事長は奥村さんの制服のスカーフをしゅるりと解いてブラウスを脱がしていく。奥村さんは拒むどころか受け入れていて、やや恥ずかしげに頬を染めつつ理事長の首に腕を回して喘いでいる。

これって、あれだよね。
完全に18禁だよね!ここ学校ですけど二人っ!!

理事長が奥村さんをゆっくりと押し倒すと、二人は深く口づけ合う。
実に生々しい。キスなんてドラマやアニメでしか見た事がない僕。しかも憧れている人が理事長とキスしているだなんて・・・残酷だ!!
手に持っている彼女のおまもりを強く握ってしまう。

僕は魅入ってしまった。
二人が没頭する行為。友達と隠れて見たAVより迫力があって、ひたすら興奮する。自分でも無意識に息づかいが荒くなった。
そして終盤を迎えると、奥村さんは理事長の背をぎゅっと抱きしめながら「メフィストぉ・・」と甘えた声をあげる。理事長は奥村さんの額に口づけて、また唇にキスを送った。

僕ははぁ・・と大きなため息をついた。
色々ショックだ。だって奥村さんと理事長がデキていたのは事実で、しかも二人は兄妹なんだから。
理事長や奥村双子に何か複雑な事情があるのかわからないけどさ・・。
さっきまでは興奮していたくせに、心はブルーな僕。二人の行為も終わったことだし、そろそろ立ち去った方がいいかも。
でも、まだじっくり見たい・・・。奥村さんの恰好がとてもいやらしくて扇情的で。体育着や水着以上に露出した肌がとても奇麗で堪らない。

そのとき、ぞくりと躯全身に冷たい汗が流れた。
理事長が口回りについた唾液をぺろりと舐めとると、ゆっくりと顔を上げる。すると、ニヤリと笑いかけた。扉の隙間から覗き見る僕を見ながら・・・。


――――え?


気づいてる?覗き見ているの気づかれてる??
まさか、だって扉はほんの僅かで、人間の視力じゃ見えるはずがない。
うん、そうだ。気のせいのはず・・ん?
僕を覆い被さる影。後ろを振り向くと、全身真っ黒なスーツを着た執事が立っていた。異様に背が高くて、僕はひぃっと悲鳴をあげて思わず腰を抜かす。
やばい、理事長の関係者だ。教師にでもバレたら謹慎処分を受けるかもしれない!!

すると執事が取り出したのは・・・ピコピコハンマーだった。
思わず拍子抜けすると、執事はそれを構えて振り上げる。

「旦那様の命令ですので」



――――ボカッ!!!


頭に一発喰らう。
ピコピコハンマーのくせに鈍器に殴られたような衝撃を受け、僕は倒れた。
おまもりが、手から落ちる。ぎぃ、と扉が開くと。

「あれ・・・こいつ」

奥村さんが僕を見下ろしていて・・そして意識はなくなった。





目が覚めたとき、僕は寮の部屋で眠っていた。
ルームメイトが言うには、廊下で倒れていたらしい。外傷もなく健康そのもの。何故倒れていたかわからない。保健医も首を傾げていた。
念のために検査を勧められたけど、僕は断った。だって、本当に何もないと思ったから。
自分の躯は大事だけど、もっと大切なものを僕はなくしてしまった。
奥村さんのおまもり。渡そうと追いかけて、そのまま気絶した僕。

せっかく、話せる機会ができたと思ったのに。僕は酷くがっかりした。


それから一週間後。
毎日のように嫌でも聞こえていた奥村さんへの悪口は減っていた。
理由は特進科の奥村雪男が噂を流した女子グループに直接忠告していたから。これって逆効果なんじゃ・・と思ったけど上手くいったようだ。
聞くところによると、あの優等生は言いふらすグループを一つ一つわざわざ呼びつけて頭まで下げたらしい。こんな誠実なことをされちゃ、彼女達も反省せざるをえない。素直に奥村雪男はかっこいいと思う。

それと奥村双子と理事長の関係は単なる後見人。
二人の亡くなった義父と理事長が友人だったらしい。

それに奥村さんは祓魔師を目指していて、祓魔塾にも通っているんだって。
成績(実技)は優秀で、学業との両立は難しい。これなら彼女の成績が低いのも頷ける。納得のいく正当な理由だ。
広めた女子グループ達も最近静かで、クラスは落ち着きを取り戻している。

男子達は再び奥村さんブームで、声をかけないものの隠れて熱い眼差しを送っている。肝心の本人は気づいていないけど。

僕は欠伸を漏らす。
いつもと変わらない日常。隣の奥村さんとは相変わらずの距離。もっと気軽に話してみたいな、と思うけど勇気がでない自分が哀しい。
そう思っていると、彼女が教室に入って来た。鞄にはおまもりがついている。
それは僕がゴミ箱から拾ったはずなんだけど、何故か彼女は持っている。何でだ?僕はほんとはお守りは拾ってなかたのか?あれは夢?それとも気のせい?だめだ・・訳がわからない。

ため息をつくと、奥村さんは席に着かずこっちの方へ向いていて・・。

「あ、あのさ・・」

「え?」

「おはよう」

「お、おはようっ!」

奥村さんが挨拶をしてくれた!?
僕が目を潤ませて、感動しながら返すと彼女ははにかむように笑ってくれた。


あぁ、神様。
今日も奥村さんは可愛いです!!




END

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