ないしょないしょ。

「ねぇ」

「誰か来たらどうすんの」



「そうだね、困ったね」
「宮田さんあたり来たらどうすんの」
「それはそれで面白いじゃん」
「面白くない」
「ケチ」
「ふふ、ケチじゃない」



「どいてよ」
「やだよ」
「一回ちゅーしよ」

「やだよ」
「なんで」
「そっちもやだって言ったから」
「子どもかよ」
「中学生かよ」
「変わりない」
「まったく…」



「なんでその一回のちゅーのためにこんなにドキドキしないといけないの」
「ドキドキしてるんだ?」
「してないよ」
「ウソ付きはお仕置き」
「イニシアチブ握ろうたってそうはいかないんだから」
「…難しい言葉をご存知で」



「嫌ならいいよ」
「壁に押し付けといてよく言うよ」
「嫌ならいいよ」
「嫌じゃないよ」
「嫌ならいいよ」
「それずるいからやめて」
「やだ」
「耳元で笑わないでよ」




「もう」
「する気になった?」
「しないとどかないんでしょ?」
「してもどかないかもよ」
「室長呼んでアサイン取り消してもらおうk」
「それだけは止めてくれ」



「ん」
「なによ」
「たまにはちゃんからして」
「悔しいな」
「悔しくない」
「悔しいよ、勝てないのが」
「俺だって負けっぱなしだよ?」
「知ってるよ、いつも負けてくれてるの」
「負けてよ」
「そうだよ、だからするんだからね」
「はいはい」



そう言って誰もいない廊下に響いた。
一回のキスは長くて長くて。

誰も来ないことを願った。



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