あたらしい朝

新田さーん朝ごはんできましたよー!

…遠くで聞こえる日本語。
たぶんだかあれは愛しい人の声。

今日は休みだ…もう少し寝かせて欲しい。
そう思いながらドアに背を向けるかたちで寝返りをうった。



【あたらしい朝】




新田の願い虚しく、

「朝ごはんできましたよー!
新田さーん?」

なんて普段呼ばない呼び名を言いながら、ちゃんが部屋を開けた。

朝ごはんのいい香りも一緒に連れてきた。

コーヒーと…たぶんこれはベーコンな香りがする。
やはりこのまま寝かせてほしいので、つかの間無視することにした。

というか「新田さん」ってふざけてるんだろうけど…なんか…腹立つ。
昨日やっと下の名前で呼んでくれたのに、もう終わりかよ。

小さい男だと思われるかもしれないが、やっとの想いで結ばれた。

昨日はありったけの思いをぶつけて、抱き締めて寝たはずなのに、今朝は自分の手をすり抜けてごはんを作ってくれていることに、情けなくも有難くも感じていた。

なんだか悔しいので意地でも起きないことにしてみた。


ちゃんは新田の想いなどつゆ知らず、付けていたエプロンを外し、くるくるとしてそこいらに置き、愛しい人の服が散らばっていたので「新田くんは寝ぼすけさんですねー」なんていいながら、たたむ。
たたんでいるのに頬はゆるんだ。

こんなに身体大きいんだなあと改めて思い知らされ、ドキドキしてしまう。

どんな感じだったか、肌で確かめたくなってきた。
寝てるの起こすのは怒られそうだし…でももう触れたい衝動に駆られているのだから、と

「にゃーん」

彼の好きなものになることした。
お、我ながらいい声色が出たなぁ
なんて思いながら新田の顔の方に周りこむ。
「ながーい睫毛…」と小さな声でつぶやく。

まだ新田は目を覚ましてくれない。

日々の訓練の疲れか、私が腕をすり抜けれたくらいだから、もしかしたら起きないかもしれないし。
お…起きないかもしれないし…と心の中でつぶやきながら、もう触れたくてたまらなかった。

もう一度今度は短く「にゃん」とつぶやくと布団の中に潜り込み、小さくもう一度鳴いて、その大きな身体に腕を回した。

胸に顔を埋めると心臓の音が聞こえる。なんていい音だろうと思っていると、ぎゅっと抱き締められた。

「新田くん、あれ、起きてた?」
そりゃ起きるよね、なんて思いながらたくましい腕に、ドキドキしてしまう。
声に緊張がでてしまう。


「…ゴロゴロは言わねぇの?」
「え」
と顔を声がする方に向けるとキスをされた。
後頭部に大きな手があって、逃げ道を探すことすらできず、息ができなくて乱暴なキスをされる。


「にったく…くるし…」
「零次」
と言ってまた唇を塞がれる
「んん…」
酸素が足りなくて、絡ませ続ける舌に溺れてるような感覚になってクラクラしてきた頃に

「言って」

と唇を離し、おでこどうしをくっつける。
ちゃんの顔はれいじの手の中にすっぽりだ。
ビックリして目を開く。
当たり前だけど近くで見ても伏目がちな目にキレイな長い睫毛。

愛しい人の名前をありったけの気持ちを込めて口にした。
「れーじ…」

大きな手が頭の後ろにまわって抱きしめられる。
片方の手は腰のところにきて撫でられて、好きな人の手に敏感になってしまう。
「ちゃん…」

耳元で名前を呼ばれる。
一層低い声に身体が反応してしまう。
耳に、
首に、
鎖骨に、
キスされて、また耳に戻ってきて

「猫じゃなかったら俺今日一日拗ねてたと思う」

と言われた。
声色が照れていた。
あとで聞くとこういうことを言うキャラじゃない自分自身にと、拗ねていた自分に。

途端に愛しさが増してきて、可愛い人の首に抱きついて、とりあえず口でゴロゴロ言ってみた。


そんな私たちにとってはじめての朝。




(猫は喉でゴロゴロ言うんだぜ)
(…ムリ!)


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