変な薬を飲まされた。特に理由なんてない。罰ゲームみたいなもの、だろうか。好きで飲んだわけではない。
それはある意味で毒のようなものだった。甘くさらりとした触感のそれを飲んですぐ、体に熱が灯った。のろのろとベッドに倒れ込んで息を吐く。飲むだけで何かしろと言われたわけではないから、それで構わないのだと思う。
「ん、」
腰はすっかり砕けてしまっているし、ひどい目眩がしている。閉じた瞼から生理的な涙が落ちた。背骨からぞわぞわと寒気が走るのに、頭は熱せられたように熱い。
「ぁ、あ、…は、」
体の熱を逃がすためにシーツを掴んで耐えてみたが、目眩がするばかりだ。体の中心が存在を主張して、先端から蜜が零れる。服がべたべたで気持ち悪くて脱いでしまいたい衝動に駆られるけれども、それだけの力が入らないのだ。
「エリィ、だいじょーぶ?」
間延びした声にのろのろと顔をあげる。深緑色の大きな瞳がぱちぱちと瞬いて、エリアスの顔をのぞき込んでいた。汗で張り付いた髪を心配そうに撫でる手の温度がひどく冷たく感じる。
「ん、だいじょうぶ、」
「大丈夫じゃないでしょー、もう」
ヨシトモはあきれたように眦をつり上げると、エリアスの白い首筋に唇を押し当てた。あ、と甘い声が零れる。そのまま舐め上げられて体から力が抜けた。
僅かに残された羞恥心が悲鳴を上げたが、薬で浮かされた脳は快楽に従順だった。長い足をすり合わせて与えられた感覚に耐える。じわじわとした快楽で体が火照らされて、おかしくなってしまいそうだ。
「っあ、そこ、だめ、」
「えー、気持ちよさそうなのに」
てらいのない言葉に赤面して、死んでしまいそうなくらい恥ずかしい。ヨシトモはベッドの上のエリアスにのし掛かると、体のあちこちに舌を這わせた。火が灯るようにじんわりと広がっていく快楽が理性を削る。
「あっ、ん、ヨシトモ、」
「なあに、エリィ?」
優しい声をあげる彼は微笑んでいて、ふわふわとした気分になる。気持ちよくして、と輪郭の溶けた声で強請ると、ヨシトモの笑みが深まる。
体や顔に触れるヨシトモの唇があまりに柔らかいので、感じる快楽はそれほど激しさは無く、穏やかなものだった。エリィ、と呼ぶ声がまるで甘えるようなので、妙な倒錯感を覚える。口づけられるたびに舌を絡ませると、ヨシトモが心地良さそうな声をあげた。
「エリィ、苦しくない?」
「……ん、」
つう、ヨシトモの細い手がズボンの上を這う。唇の端から零れる唾液を飲み込めぬままうなずくと、ゆるやかにジッパーが下ろされて、張りつめたものが外気に触れた。
ヨシトモの両手が太股に触れた。どことなくとろりと蕩けた表情のヨシトモの顔がそこに近づくのを制止もせずぼうと眺めていると、ぬるりとしたものが足の間に触れて目の前に火花が散った。
「あっ、ん、」
「んむ。ひもひいい?」
くわえたままヨシトモが声を出す。唇から女のような声が漏れるが、それを恥ずかしいと思う余裕など無かった。
「あっ、あ、だめ、だめ…っ!」 
「なんで?きもちーでしょ」
ちゅる、と裏筋を舐めあげられて唇から甘い声が漏れた。足の間に埋まる髪を掴んで暴れてみたけれど、太股ががくがくと震えてしまう。赤い舌にぴちゃぴちゃと舐められて全身が粟立った。アイスキャンディーを口内で転がすように、柔らかな舌が全体を舐めたかと思うと先端をぐりぐりと突かれてはくはくと唇が震えた。
「んあっ、あ、で、でちゃ、ぁ、」
「ん、いーよ」
「っあ、あああ…っ!」
ヨシトモの間延びした声とともに一層強く吸われて、ほそい背中がしなる。体から熱が溢れ出した。心臓の音が鳴るたび先端からびゅくりと溢れるそれを、ヨシトモの口が受け止める。それに何かを思う余裕もないまま、熱に浮かされた瞳で彼を見つめた。ちゅ、と先端を吸われる感覚に声にならない悲鳴が漏れる。唇の端からとろりと唾液が伝って服を汚した。
既に熱は全身に広がって一体化していた。薬のせいで熱いのか、あるいはヨシトモのせいなのかもよくわからない。
はあはあと荒い息をこぼすエリアスを後目に、ヨシトモはこくりと口の中の液体を嚥下した。にがあい、と顔をしかめるのをぼんやりと聞く。だいじょーぶ、と間延びした声をかけてくる少年の顔が視界の中で滲む。
「んむっ、」
痺れた頭のまま彼の首筋に腕を回して唇に吸い尽くと、ヨシトモの目が見開かれた。差し入れた舌から苦い味が広がる。常には白い肌がほんのりと赤く染まっている。
「ん、んむー…エリィ、にがくない?」
「う、ん、あつい、」
「暑いの?おれいない方がいい?」
「や、いて、」
思わずヨシトモの体にすがりついた。一人でこの熱を逃がす方法がわからない。ヨシトモに触れられた箇所な気持ちよくて、頭がおかしくなってしまいそうな気さえしている。
エリィは甘えん坊だね、と笑うと、ヨシトモは服の中に手を差し入れてきた。力の入らない腕を背に回すと、ヨシトモはふわりと笑った。




「エリィ、一緒にみかん食べようよー。美味しいよ?」
ベッドの上でぐったりと眠っているエリアスを揺さぶるヨシトモの顔をのろのろと見上げる。ひどく体が重い。手や唇でひたすら気持ちよくされていただけだったから痛みこそないものの、泥のように眠ってしまいたいほどには疲れている。
「ごめんね…僕、眠いから…。しばらく寝かせて…」
「ええー、エリィと食べた方が美味しいもんー。食べようよー、ねえってばー」
怠い頭にヨシトモの声が響くが、眠気を覚ますには足りない。ぐったりとしながらうーうー唸るエリアスを見ながら、ヨシトモはぷくっと頬を膨らませた。ほぼ落ち掛けた目蓋でその様を見ながら、ヨシトモこそ子供だな、などと思う。
「もー、エリィったら。いつもお昼まで寝てたらだめーって言うのに」
「ん…元気になったら、遊んであげるから、いい子にしてて」
眠い体に力を込めて微笑みながら、ヨシトモのミルクティー色の髪を撫でた。こうして子供のように扱っても喜んでくれることを経験上知っている。
「ほんとぉ?約束だよ!」
急にご機嫌になってにこにこ笑い出したヨシトモに半分呆れつつほっとしながら、軽く息を吐いた。この怠さが早く抜けることを願いながら目を閉じる。
明日は何か作ってやろう。はしゃぐヨシトモの顔を想像すると、今にも寝入りそうな顔にふと笑みが零れた。



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