道標
「先生、これお願いします」
職員室で黙々と仕事をこなす担任の元へ、日誌を差し出す。パソコンと睨めっこをしていた担任は、顔をぴょこりと上げて愛想の良い笑顔でそれを受け取る。
「ありがとな!いつも助かってるよ」
「先生こそいつもお疲れ様です」
どこにでもある校内の風景だ。だが、二人には他人には言えない秘密があった。
一月程前から交際を始めている、ということだ。この事実を知っているのは極小数で、保健医と教育実習生、幼馴染みの3人だけだ。
「あ、なまえ!さっき琥太郎先生が、お前のこと探してたぞ」
「分かりました。ありがとうございます」
今の会話。端から聞けばごく普通の業務用の会話だが、実は秘密の合言葉だったりする。「琥太郎先生が探していた」は「今夜屋上庭園で会わないか」の隠語なのだ。なので、ここで使われたなまえのありがとうございますも、「誘ってくれてありがとう」の意味が込められている。
二人の関係が他にばれないように、このような策を試行錯誤しながら行っていた。
部活も終わりだいたいの生徒が寮に戻った放課後。なまえは一人、屋上庭園のベンチに座り最愛の直獅の到着を待っていた。
「悪い、遅くなった」
しばらくすると、走ってきたと思われる直獅が息を切らしながら謝罪の言葉を述べる。
「先生、とりあえず座ってください」
「ありがとな」
ベンチに座り一息ついたのか、ふぅとため息混じりの言葉が漏れる。
そんな彼になまえからお仕事お疲れ様です、とグラスが差し出される。突然グラスが差し出され状況が把握できていないのか、頭上にクエスチョンマークを浮かべている。
「ミックスジュースですよ。甘くて美味しいと思います!」
多分ですけれど、と小さな声で付け加える。加熱したり調理と言った調理はしていないので美味しくない可能性は低いが、普段のコトを思い浮かべると自信を持って美味しいとは言い切れない。
そのことも分かっている直獅先生は、「た、多分ってどういうことだ!」などとからかいながらもごくごくとミックスジュースを飲み干した。
「く〜っ!酒も旨いが、たまにはこういうのもいいな」
「本当ですか?」
なまえの表情がパアッと明るくなるのが分かる。
そんななまえを見て、直獅は幸せそうに笑う。
「いいですねぇ。なんと言うか、とっても和みます」
これも直獅先生といるおかげかなと、とても穏やかな雰囲気が辺りに流れ込む。
「私、先生といれる今がとても好きです。教師と生徒っていう関係から、堂々と交際出来ないのは辛い時もありますけど…。それでも、いつもこんな側にいれるなんてこと滅多にないでしょうから、私は今すごく幸せです」
「嬉しい…よ。俺達の関係からお前に迷惑をかけることが多いから、もう嫌になったって言われたらどうしようかと、いつも不安だったんだ。だから、すごく嬉しい」
「先生が好きすぎて苦しいです。だからお嫁にもらってください」
「えっ!?」
俺がお前をお嫁に…とぶつぶつと呟く直獅先生は、だいたい放心状態だろう。
なまえが、ダメですか?と首を傾げる。直獅はしどろもどろしながら、自分の思いを伝えようとしている。その努力も虚しく、うまく言葉にまとまらないようだ。
すると小さく聞こえるリップ音――直獅の頬になまえの口づけが舞い降りた。
「私はプロポーズ、いつでも待ってますからね、」
僕等の愛は君次第
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直獅の誕生日に間に合うように書いてたはずなのに、いつの間にか月末です(´・ω・`)
こんなはずじゃなかったのに…!
遅くなったけど、直獅お誕生日おめでとう!
可愛い直獅は見る度好きになるよ\('ω')/
とりあえず私は、さっさと課題終わらせてサイトの更新しろ
頑張ります(`・ω・´)
多分、明日には課題終わる!←
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