恒例行事で御座る!
窓の外では雪が降り、画面を白色に染めて行く。季節は冬――今日から新年だ。
「あけましておめでとう!」
「あけおめです、直獅先生!」
新年と言うことで、今日はなまえと琥太郎先生の愛の巣(なまえ命名)という名の家で、あけおめパーティーだ。メンバーはなまえ、琥太郎、直獅と郁だ。所謂、いつものメンバーである。
「あけましておめでとう、なまえちゃん。今年こそは君が僕を好きになるって信じてるよ。」
「郁、旦那の目の前で嫁を口説くな」
これだから嫌だったんだ、と琥太郎がため息混じりに呟く。
琥太郎は、このパーティーを承諾していないのだ。理由は簡単だ。なまえと二人で、新年を祝いたかったからだ。だがなまえの方が直獅に誘惑されたせいか、皆でパーティーをやりたいと駄々をこね、琥太郎はそれに負け今に至っている。
思い思いの相手と会話をしながら、お節料理を口に運ぶ。勿論、なまえ特製――ではなく、琥太郎特製だ。なまえが料理が得意ではない故に、琥太郎が炊事当番だ。琥太郎が作るお節料理は、どれもこれも美味しい。
―― 何故だ、何故だ。何故だ!
なまえは自分の料理の出来なさと琥太郎が作った、美味しいおせちを比べ、何とも言えない気持ちと葛藤している。
「とりあえず、お正月の恒例行事を開催しましょうか。」
「酒だなっ!」
違いますよ、と即答するなまえ。なまえはもう成人はしたが、別にお酒を飲みたい訳ではない。
「お年玉ですよ、お年玉!」
早くくださいと三人に向かい手を差し出す。差し出された三人は、その手から逃れるように他所を見ている。
その中から一人目のターゲットを選び、腕を掴む。
「お年玉くれないと、郁ちゃんの事嫌いになっちゃうかも。」
郁の腕にベタベタと纏わり付きながら、お年玉を要求する。なまえ…、なかなかあくどい技を使う。惚れた弱みにつけ込むのだ。
「君の、そういう所ずるいと思う…ッ!」
悔しそうに、財布から女性の顔が印刷されたお札を取り出す。
それを手渡されたなまえは、笑顔で郁にお礼を言い、次のターゲットへと視線を移す。
なまえの視線の先にいた人物は…。
「お、俺もか?」
「勿論です、直獅先生。」
郁の時同様に、なまえは直獅を捕獲する。郁も自分が既にお金を渡して吹っ切れたせいか、なまえに便乗して直獅からのお年玉を待っている。
「お前ら二人にちゃんと、お年玉用意してあるんだぞ!」
「……。」
「こ、琥太郎先生。そんな目で見られても、琥太郎先生の分は用意してないんだが…。」
琥太郎も図々しい事を考えたりもするんだ、と若干の感動を覚えつつ、なまえは直獅に手を差し出す。
「わざわざ、ありがとうございます!」
「僕も!ありがとう、陽日先生。」
直獅は、差し出された二つの手に、お年玉を置く。
ちなみに琥太郎先は、なんだか切ない目で遠くを見据えてる。
「琥太郎さんッ!」
「俺にもお年玉を要求するのか?」
「え、くれるならぜひ欲しいです。私は琥太郎の妻だから遠慮しようかと思ってたけど。」
貰える物はとりあえず貰う主義のなまえは、琥太郎からもお年玉をもらえるのかと期待する。
「俺からのお年玉は、二人きりの時に渡すから。な?」
「全く、琥太郎センセもなまえも見せつけてくれるよな」
呆れるように呟く直獅の言葉に、首を頷かせて聞いてる郁。
「俺らに、そういうつもりはないんだけどな。」
「右に同じく、ですね。」
お年玉くれないと…ッ!
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新年あけましておめでとうございます(`・ω・´)
早くも2011年が終わり、2012年になってしまい動揺が隠しきれない錫奈です。
お正月だから、一番好きな季節でふざけるネタを書こうと思って書いてたら、いつの間にかこんなことになってしまいました。
お正月だから1月いっぱいフリーで配布させていただきます。
報告は任意ですが、下さると元気になります。主に私がw
えー、本年もどうぞよろしくお願い致します。
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