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「古市さん…?」
「っ、あぁ悪ぃ、MANKAIカンパニーの芝居は面白いはずだ」
「ご存知なんですか?」
「まあな、」
そう言われてしまっては、私はこれ以上何も聞けなかった。知り合いが居るとかかな?と一人納得する。

「楽しめよ」
「はい!」
古市さんとようやく視線が合い、私は思わず笑顔になる。


サラサラとした金色の髪、メガネ越しに見える澄んだ紫色の瞳に切れ長のシャープな目、彼を構成する全てがかっこよく見える。右目の下に二つ並ぶほくろすら可愛く見えてくる。
ジロジロ見るのは失礼だと思いつつも、私は古市さんから目を逸らせなかった。
ほんとイケメンだなぁ、と思いながら彼を見つめているとさすがに居心地が悪くなったのか、なんだ、と声をかけられた。
「いえ、すいません。つい、」

古市さんに会いたいと思っていたけれど、実際に会えたら話すことに困ってしまう。
「古市さんは今日お仕事お休みなんですか?」
「…あぁ、まあな」
含みを持たせる言い方だった。仕事に関する話はダメだったのかな?古市さんってなんの仕事をしてるんだろう、スーツが似合いそうだなぁなんて思っていると今度は逆に聞き返された。

どうやら、このカフェでの心地の良い時間をまだ共有してくれるようだ。
「苗字は学生か?」
「はい、大学でウェブ関係を学んでいます」
「そうか、苗字に声をかけたとき高校生かと思ったな」
「なっ、21ですよ!とっくに成人してお酒も飲めますからね?」
そう怒るな、と古市さんになだめられたけれど、完璧に子供扱いされている気がする。

「そう言う古市さんはおいくつなんですか?」
「30だ」
一瞬耳を疑ったが聞き返すとほんとに30歳らしい。

「ちっ…悪かったなおっさんで」
舌打ちをして拗ねたように言う古市さんも可愛かったが、機嫌を損ねてしまうのは嫌なので慌てて訂正する。
「全然見えないですよ、26〜28歳ぐらいだと思ってました」
「あんま変わんねぇだろうが」
そう呆れ気味に言う古市さんの表情が怒っているようには見えなかったので、安心してすいませんと軽く謝罪をしたが、思わずふふっと笑ってしまった。



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