黄瀬と火神と青峰さん


「ケーキ焼いたから持ってきた」
「わざわざありがとう」
家に通すなり、黄瀬は火神から箱を受け取った。
「開けても良い?」
「どーぞ」
テーブルに置いて箱を開く。中身は等間隔の層が綺麗なミルクレープで、黄瀬は満面の笑みを浮かべた。
「年々上がってく火神っちの女子力には、ドン引きの勢いっス」
「え?なんで俺罵られてんの?」
「すこーい。美味しそう」
「前半の罵倒はいるのか?なあ?」
「お茶淹れて来るね」
「聞けよ」
パスミスばかりの会話はファンブルだらけとなっているが、いちいちそんなことで目くじらを立てるような仲でもない。
やれやれと火神が椅子に座ると同時に、音もなく走り寄る影があった。
「うわっ、なんか来た!」
「青峰さん駄目っス!火神っち、猫は平気だよね?押さえて!」
テーブルに乗った黒猫は、まさに今ケーキに手を出すその寸前で、火神に捕らえられた。
不満気に身を捩らせる猫を見ながら、火神は黄瀬に声をかける。
「こいつ、『青峰』っつーの?」
「そう、青峰さん。可愛いでしょ?」
二人分の紅茶をテーブルに置いた黄瀬は、火神から黒猫を受けとる。
「…ムカつく名前」
「何をー!」
黄瀬はぐっと、黒猫を火神に突き付けた。
「いけ、青峰さん!火神っちに新たなトラウマを刻んでやるっス!」
「ちょっ…お前、やめろって…!」
「シャー!」
「なんで猫もその気になってんだよ!」

Back

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -