黄瀬と子供と黒猫


青峰さんだ。
一目見て、そう思った。


帰宅途中の黄瀬は、家の近所でたむろする子供たちを見かけて、足を止めた。
「なにしてんスか?」
ひょいと覗きこめば、子供たちは困った顔で見上げてくる。その中心には、こじんまりした段ボール箱があった。
「あー…」
箱の中には、一匹の猫がいた。
艶やかな黒い毛並み。部活帰りに食べたソーダアイスのような瞳。
すぐに思い浮かんだのは、一つの名前だった。
「…捨てられてたの」
ランドセルを背負ったままの女の子が、眉をへにょりと下げて言う。
小さな命を放っておけない子達がこんなにもいるのだ。日本の未来は安泰だ、なんて年寄りめいたことを考えた。
「…よし」
腕を伸ばした黄瀬は、段ボールごと黒猫を抱き上げた。
「この子は俺が引き取るっス」
ぽかんと一様に口を開けていた子達たちは、わぁっと黄瀬に抱きつく。
そんなに感謝されるようなことをした訳じゃない。くすぐったく緩みかけた黄瀬の頬は、次の瞬間凍りついた。
「猫ちゃんにご飯をあげられるだけのカイショーある!?」
甲斐性。最近の子は、随分と難しい言葉を知っている。
「お兄ちゃん、誰かのヒモとかじゃない!?」
日本の未来は大丈夫だろうか。
らしくもなく、黄瀬はこの国の未来を案じた。

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