LONG NOVEL

小野田坂道 (5/46)

「あ」
「あ」


声に出したわけじゃない。
心の中で思わず発しただけ。

週に一度の嫌〜な外周ジョギングの時に前から走ってきた自転車の集団とすれ違った。

この間自転車競技部にアニオタ男子の偵察の時に出会った数人と、すれ違う一瞬視線が交わされた。

先頭を純太が、少し後ろを青八木先輩が。

関西弁の赤い頭に黒髪のひょろ男と、同じクラスだった事を最近知った今泉。

今泉以外名前は知らないけど、人覚えの苦手な私がこの一瞬で知ってる顔を判断出来た私、なかなかじゃない?

向こうも向こうで赤い頭と黒い頭が「あ」って口をしてた。

今泉はいつも通りすかした目線だったけど私の方をちらっと見た。


「今のが自転車部?」
「そうそう、この間総合優勝したんだよね」
「個人優勝した子いるんだよね?1年生で」
「えっと・・・誰だっけ?」


前を走ってる先輩が自転車部の話をしてる。

個人優勝したの、小野田坂道ですよ!
アキバ大好きのアニオタで私が探してる小野田坂道・・・・・あれ?

そういえば集団の中にそれらしき人物が見当たらなかった。

あの赤い頭はオタクオーラをこれっぽちも感じないし、黒い頭はインテリっぽくて仲良くなれそうな雰囲気じゃない。

この間も会えなかったし、今日もいないみたいだし、もしかしてアニ研再建の準備してるとか?!!


「名前、何一人でニヤニヤしてんのよ、気持ち悪い;」
「ニヤニヤなんかしてないもーん」


そう思うとニヤつきが止まらない。

中学でずっとひた隠しにしてきたこの趣味。

下手にはしゃげば変な目で見られるし、オタクはオタク、分からない人にはやっぱり気持ち悪がられる。

だから池袋に行くのも秋葉原に行くのもいつも一人だった。

何度か純太を誘ったりしたけど、映画を見て、私がショップを見てる間外で待ってて貰うのが精々だった。

高校に入ったらアニ研入ってオタ友たくさん作ってアキバ行ったりイベント行ったりコラボカフェ行ったりたくさんたくさん楽しもうと思ってた。

小野田坂道はオタ友第1号!

ようやく夢が叶うかもと思ったら顔の筋肉が緩んじゃって緩んじゃって・・・


「え・・・ちょっとメガネ!どうしたのよ、なんでこんな後ろにいるのよ!」
「あ、寒咲さんのお友達・・・こんにちわ;」


今泉達が通り過ぎてだいぶ経ってから、一人のろのろと自転車を漕いできた丸眼鏡の小柄な人物。

綾ちゃんが"メガネ"と言ってるこの人が?


・・・・・小野田坂道?!!
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