LONG NOVEL

ウエルカムレース(今泉視点) (45/46)

「おい、何してんだ」
「え!?あ、いや・・お疲れ様です!」

自転車置き場でウロウロと妙な行動してる奴がいると思ったら鏑木か。


「部室行かないのか?」
「行きます行きます!今行くところだったんです」


今日は新入生のウエルカムレースだ。
いつも自信満々に俺達の練習に付いてこれてるくせに、今日はさすがに緊張してるのか。


「あの今泉さん」
「何だ」
「なんか怒ってます?」
「怒ってない、どうしてだ?」
「いや、なんとなくですけど」

怒ってなんかない。
イラついてるだけだ。
原因はお前の言う通りお前だ、鏑木。

「遅くなりました!」
「まじほんま遅いちゅうねん」
「す、すいませんっした!」

大笑いする鳴子に頭下げながら視線は別の人物に向いてる。

「何?」
「べ、別に;」

苗字が鏑木の視線に気づき話掛けるが、慌てて視線を逸らせそそくさと苗字から離れる鏑木。
あの二人に一体何があったんだ?

・・・気になる;

「今泉君、鳴子君いよいよだね」
「自分が出るわけでもないのに緊張するな、小野田君」
「そうだね」
「1年生レースの生きる伝説が何を言ってる」
「い、生きる伝説?!何それ////」
「お前の「小野田君の事や」だ」

はわはわしてる相変わらずの小野田を遠目で見ている寒咲と苗字。
笑顔の寒咲とは対照的な苗字の顔。

あいつ小野田を見てる?

「1年生ウエルカムレーススタートです!!」

小野田がスターターをやり、1年とそして杉元がスタートした。

レースの結果は1位鏑木、3位段竹。
杉元は2位で終わった。

鏑木の方へと歩いていく苗字。
今まで段竹と笑いながら話していたくせに、苗字が来た途端ベンチから立ち上がり苗字の顔を俯き加減に見詰める。

何を話してるのかは聞こえない。
ただ苗字の言った一言で表情を変える鏑木。
その鏑木の顔にレース前に苗字が小野田に対してしていた表情と重なった。


「おい」
「は!?今泉さん、お疲れ様です!」
「お前いつもここで何してんだ」
「え!べ、別に何でもないっす;」
「ロードの調子でも悪いのか?」
「え・・・え〜とですね」
「・・・」
「確認してるんですよ、タイヤの」
「タイヤ?」
「苗字先輩が」
「私が何?」
「苗字先輩っ!!」

俺の横から顔を突出し鏑木に詰め寄る苗字にドキリとする。

「今泉も何してんの?こんなとこでいつまでも」
「俺じゃない。怪しい行動してるのは鏑木だ」
「怪しい行動?」
「怪しくなんかないっすよ!俺はただタイヤの空気確認してるだけです」
「タイヤが何?」
「何って・・ええええ!忘れたとか言わないでくださいよ?!」
「え?なんだっけ?」

顔を赤くしながら凄い剣幕で苗字に叫んでる鏑木に対して、笑いながら鏑木の頭を撫でる苗字。

「あれ本気にしたんじゃないよね?」
「だって先輩の顔マジだったじゃないですか!誰だって本気にしますって」
「そんなめんどい事するわけないでしょ」
「俺一人で毎日タイヤ確認して馬鹿みたいじゃないっすか」
「あはは、私し〜らない」

2人の会話の意味が分からずアウェイな俺。
傍で苗字の体温を感じていても気持ちは全く近づけてないと感じてしまう。
超が付くほどのオタクなくせに、こいつの傍にはいつも誰かがいて・・

「もしかして今泉さんもワンピース好きなんですか?」
「何だワンピースって」
「え!?ワンピース知らないんですか?有名じゃないですか」
「今泉はアニメ興味無いもんね?私達とは違うから」
「え?私達って俺の事ですか?」
「違う違う、カブの事じゃないよ」
「え?じゃ誰の事言ってるんすか?」

俺の頭に浮かんだ人物は一人しかいない。



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -